全4894文字

興収10億円でヒットと呼ばれるなか、公開11日で既に40億円を突破した新海誠監督の最新作「天気の子」。原作「小説 天気の子」(角川文庫)は異例の初版50万部にもかかわらず発売4日で重版が決定、RADWIMPSによる主題歌「愛にできることはまだあるかい」はオリコン週間デジタルシングルランキング(7月29日付)で初登場1位を獲得した。

©2019「天気の子」製作委員会

前作「君の名は。」とほぼ同じ「チーム新海」で挑んだ今作は、東宝初の「試写会ゼロ全国一斉上映」など様々なチャレンジを仕掛けている。裏側にいるのは、プロデューサーである古澤佳寛氏、川村元気氏が東宝を飛び出して設立した新会社STORYだ。

STORYは2017年9月に設立。古澤氏が代表取締役社長、川村氏が代表権を持つプロデューサーとなり、現在8人が所属する。古澤氏、川村氏は東宝からSTORYに出向し、東宝にも引き続き所属する。東宝は2018年3月にSTORYと提携し、一部出資するとともにSTORYの映像作品に対して優先的に交渉権を得た。

「君の名は。」に引き続き「天気の子」でもエグゼグティブ・プロデューサーを務めた古澤氏に、ビジネス面での挑戦とチーム新海の成長を聞いた。

公開から3日間の興行収入は「君の名は。」を29%上回る結果となりました。「歴代2位の次回作」として相当なプレッシャーがあったのでは。

古澤佳寛・STORY代表取締役社長:まずはホッとしています。公開から3日間の状況を見た後で、新海監督を含めプロデュースチームで食事をしたのですが、皆同じ意見でした。当初から狙っていた賛否両論が実際にSNSなどで巻き起こっただけでなく、「むしろ『君の名は。』より良かった」という声も多くいただきました。

「君の名は。」とほぼ同じチームで制作や宣伝を担当しました。同じチームのメリットやデメリットは。

古澤氏:メンバーは確かに大部分が同じですが、立場が若干変わっています。僕とプロデューサーの川村元気は新会社であるSTORYに所属し、東宝とは別に企画・製作に当たりました。同じチームではありますが、この体制の変化によって、より自由な挑戦ができたと思っているんです。

古澤佳寛氏 STORY代表取締役社長、東宝映像本部映画企画部、映画「天気の子」エグゼクティブプロデューサー(写真:吉成 大輔)

 映画もビジネスですから、一般的な企業と同じで予算を達成することが組織として当然求められる。年度ごとに前年を上回る予算が組まれる。でも、作品をつくったり新しいものに挑戦したりすることって、その「企業のロジック」から外れてしまうことが多々あります。毎年良いクリエイティブができるわけではないし、企画ごとに時間軸も違う。その作品ならではの時間や予算の掛け方というものが当然あると思うんです。

 ビジネス面では、東宝のアニメチームとして「君の名は。」に一つの到達点があった。でも、モノづくりという面からすると、もっとやれることがあるだろうと。納期優先、予算優先ではどうしても置いていかなければならないものが出てくる。「君の名は。」に対してどの程度の予算でどういう目標を立てて……という作り方だと間違えると思ったんです。お客さんは「君の名は。」に似た作品が観たいのではなく、「全く新しい何か」を欲しているので。

 我々は新しい会社を作りました。東宝の一員ですが東宝とは別の思想で、クリエーターとメーカーが共存共栄する仕組みをつくりたかったんです。これは商品開発にも通じるものがあると思いますが、ある程度、モノ作りのための無理を寛容に受け止めながら、それでもビジネスとして成立させる。そのためには「強いチーム」が必要です。強さがあれば、予算に対するある程度の凹みはどこかで必ずブレイクスルーできる。