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池田:見せ方は、「まずスピードだ」と思っています。防災の視点からも、スピードは最大の武器だと。よくコンテンツについて「ストック型」と「フロー型」と言われますけれども、天気はもう、「1時間前の情報」では価値がない、どんどん古ぼけてしまう典型的なフロー型です。本当にリアルタイムで出していかなきゃ意味がない。

編集Y:なるほど。でも、それが難しいときがある?

池田:ええ。地震とか台風が来ると、集中したアクセスが来るんですね。それこそ普段の1000倍ぐらいのアクセスが秒単位で来るので、そのアクセスをリアルタイムでさばくために、システムのチューニングに多くのリソースを割いています。まずはスピード、求められる情報を、緊急の際でもダウンせずにリアルタイムで出す、というのが、我々のフィロソフィーといいますか、哲学といいますか、そこは最大限注力しているところです。

莫大なアクセスをさばく配信エンジニア

編集Y:そのスピードをどう担保されるのか、もうちょっと教えていただけませんか。

池田:システム的な処理の話になりますが、例えば台風の襲来で集中して莫大なアクセスがある場合にも対応できる数のサーバーを用意して、そこにどう配信すれば、効率よく、かつダウンしないようにできるのか、これは相当複雑な処理で、技術と経験の積み重ねです。我々のCTOの松本(修士取締役)は、実は私が「Yahoo!天気」を一緒に作ったときの、担当のエンジニアだったんです。

 私が「Yahoo!天気」を辞めてから自分の会社をつくって、彼もその「Yahoo!天気」を辞めた後にライブドアに行きまして。「livedoor 天気」を彼は作ったんです。その後、ホリエモン事件が起きてしまって、いろいろあった中で、「じゃあ、一緒にやろうよ」という話になって、一緒に仕事をしているんです。

編集Y:では、気象情報の配信一筋のエンジニアですね。

池田:ええ。彼はずっと天気関連だけを専門的にやっているエンジニアです。手前みそですけれども、国内でも有数の天気専門のエンジニアだと思っています。彼との付き合いが始まってもう15年なんですが、私は15年間、「天気をインターネットでどうやったら収益化できるか」を、松本はエンジニアとして、「天気のデータをいかに広く確実に効率的にさばくシステムが作れるか」を、ずっと追い続けている人間です。

編集Y:なるほど。本田宗一郎さんと藤澤武夫さんみたいなコンビなのかな。

池田:スピードが大前提だとして、後はもう見せ方だと思いますね。ユーザーさんがどういうふうにアクセスしたときに、次にどんな情報が欲しいか。それは過去のデータを分析することによってつかめます。まさしくグロースハックです。

 例えば東京都の10代の人たちが千代田区のページを見ているとすると、そういう人たちは次にどういうページを見ているか。例えば気温が何度ぐらいになったときにどういうページを見ているか、雨が降るとこういうページを見る、とか、そういった過去のデータの統計が出ますので、それらを分析しながら、「今、こういう気象条件だからこういうコンテンツを持ってきた方が、次のページをクリックしてくれやすいんじゃないか」というのを、いつもいつでもPDCAを回しながら研究している、そんな状態です。

ニュースサイトと天気予報サイトは似ている

編集Y:へええ……。変な質問ですが、「Yahoo! 天気」さんと比べて、ここがうちの方がいいよというところって具体的にありますか。

池田:やはりお互いにいいところを取り合っているので、なかなか特徴的なところを作るのは難しいです。正直申し上げて。

編集Y:あ、池田さん本当に正直ですね(笑)。そういう意味では、我々が日ごろ苦労していることと同じですね。「このニュースを読んだ後、何が読まれるんだろう」という。

池田:同じです。私も「Yahoo!ニュース」のディレクターを少しやったこともありますので、ニュースと天気ってすごくユーザー層が似ていると思います。反応の仕方も、世の中的に、災害だったり、政治的なこととかだったり、悪いことが起きるとアクセスがぱんと伸びますので。

編集Y:何か具体的に「こういうことをしたら図に当たった」みたいなご記憶ってありますか。

池田:例えば、今日みたいなぐずついた天気だと、雨雲レーダーのページにアクセスが集中しやすいんですが、ヤフーさんの場合は全国の画面がまず出てきて、県とかエリアに落とし込む場合は、「関東」とクリックすれば関東に行って、東京に行って、と、こういうおなじみのUIなんです。

 これはこれでもちろんいいんですが、本当に小さなことなんですけど、例えばタブを使う構成にして、天気情報を予想と実況で切り替えたりすると、クリックのレートが何倍になったよ、ということがありました。

編集Y:そのくらいの改変……といっては何ですが、そんなに。