異常気象が相次ぐ中、頼りにしたくなるのがスマホの気象情報サービスだ。降水確率はもとより、紫外線情報や蚊の活動(!)まで、さまざまな指標を提供してくれる。
天気予報には情報の出所が複数存在するが、予報自体の精度で決定的に優位なところがあるわけではない。また、例えば天気予報サイトで最大手の「Yahoo!天気」と、2番手の「tenki.jp」が、同じ日本気象協会のデータを使っていたこともある(現在は「Yahoo!天気」はウェザーマップのデータを利用)。現在も、goo、excite、livedoorの天気予報サービスは同協会が出所だ。
1993年までは、我が国のメディアへの天気予報を独占していた日本気象協会が公式として提供しているのは「tenki.jp」だが、情報を他社にも提供している以上、予報自体では差異化ができない。情報提供が第一の使命、と言ってしまえばそれまでだが、ビジネスとしてはどうなのだろうか。
日本気象協会と「tenki.jp」を共同運営し、ビジネス面を担当しているのがALiNK(アリンク)インターネット(東京・新宿)。同じ情報でどう収益を上げるのか、その方法論を同社の池田洋人社長に伺った。(編集Y)
編集Y:よろしくお願いいたします。「天気予報サイトはどうやって差異化を図るのか」ということで、まず簡単に御社の業務内容と、収益構造から伺いたいのですが。

池田:分かりました。弊社はALiNK(アリンク)インターネットと申しまして、今期で7期目を迎える会社です。日本気象協会(以下気象協会)さんと「tenki.jp」という天気予報のサイトを共同事業という形でやっております。
基本的には気象協会さんが天気予報を出して、そのデータをいただいて、我々の方でそれをウェブサイトにしている。マネタイズはほぼほぼ広告収入なんですが、そこの部分まで我々がやっています。
おっしゃった「差異化」で言いますと、やはりまず「気象協会の公式サイト」というところに、バリューがあると思っております。
編集Y:はい。ただ、気象協会さんの予報自体は、他のサイトやアプリでも見られるわけですよね。
池田:その通りです。ですので、ユーザーの方が例えば「この雨はいつ止むのかな」「台風の進路は」と思って「雨」や「天気予報」を検索した場合に、「tenki.jp」が上位に上がってくるかどうかが非常に重要です。
編集Y:いわゆるSEO(検索エンジン最適化、Search Engine Optimization)対策ですね?
池田:ええ。そして、いったん(tenki.jpに)入ったユーザーさんがどういうふうにサイト上にアクセスをしていって、どこで離脱しているかというデータを解析しながら、グロースハック(ユーザーの行動履歴などを分析して、マーケティングの改善を行う手法)という言い方をするんですけれども、そこの部分も我々の方でやりながら、いかにアクセスを増やすかという。
編集Y:今、「も」と言われましたか。SEO「も」グロースハック「も」、ALiNKさんの社内でやっているということですか?
池田:ええ。
編集Y:その辺ってそれこそ専門のコンサルさんとかがいっぱいあるじゃないですか。外注にしないんですか。
池田:すべてうちは内製です。サイトの開発から全部内製です。
データの扱い方と見せ方を学んだ20代
編集Y:これは面白い。そもそも、池田さんはどういう経緯でこちらの会社の社長に?
池田:大学を出て、最初に入ったのが別の気象会社でして、そこで気象の事業を学びました。気象ってそれこそ陸海空、すべての業界の人と関わることでして、なので、ヘルメットをかぶって建設現場に行って気象情報を提供してビルの建設に活用してもらったりとか、コンビニさんでも天気によっておにぎりの売れ筋が変わったりするので、それを織り込んだ受発注管理とかいろいろやっていたんです。
おかげでいろいろな経験ができましたけれど、これだと「toC」のC向けのところに携われない。
編集Y:それはそうですね。
池田:データを配信するまでが仕事なので、配信された先の、例えばヤフーさんであればヤフーさんがメディアを作られるところまでは関われない。そこを、Cとのつながりのところをもっとやってみたいなと思いまして、転職を重ねまして。実はヤフーさんでも働いているんです。
編集Y:へえ。
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