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2017年1月から始めて、今26人が個人事業主になったそうですが、どんな変化がありましたか。

谷田氏:26人の中には、30代から60代までいます。会社から受け取る報酬は全員が増えました。社員時代に会社が払っていた社会保険料や通勤交通費は報酬に含めて払っています。あくまで現時点での試算ですが、タニタの厚生年金と同じ水準の民間の保険に入った場合の支出を加味しても、独立した人の手取りは増えました。

谷田社長は「優秀な人に残ってもらうための制度」と話す(写真:竹井俊晴)

 なぜなら、制度の狙い通り、社外からの仕事を請け負ったり、従来、自腹で受けていたスキルアップの講座などを経費扱いにできたりすることが手取りの増加に寄与したからです。

 当社から新たな仕事を頼むときは、明らかにこれまでの業務と違えば「いくらくらいで追加業務としてお願い」というやり取りが行われています。これまでは残業で対応するなど、無理をしてやっていたものに対して、きちんと報酬が出るやり方が浸透し始めています。

 仕事を頼む方からすると、残業が必要になるなどの事情で社員に頼めない業務を、きちんと報酬を提示したうえで個人事業主に頼むことができるようになりました。また、そういう新たな業務は、本当に必要か、第三者に頼んだ方が安いんじゃないかといった仕事の見直しにもつながるのです。仕事の価格の相場観を持つことにもつながります。

事業だけでなく働き方でも革新を目指す

人員削減のための制度ではない

ですが、1年目は前の年にやっていた業務を続けるとしても、時がたつにつれ受託していた業務そのものがなくなったり、ほかの人がやることになったりと、個人事業主の仕事がなくなることはないのでしょうか。

谷田氏:会社には仕事がたくさんあります。従来の仕事が減ったとしても、上司に当たる人が新しい仕事を委託することになるし、本人から「この仕事をやりましょうか」と提案することもできる。主体的に働くことになるのも、この制度の目的の1つです。

人員削減の手法だと受け取られませんか。

谷田氏:そう感じる人もいるでしょうが、違います。だって、それが目的ならこんな回りくどいやり方はしません。

社外の反響はいかがですか。

谷田氏:6月にこのテーマで本を出版し、知人や取引先の経営者に配っているのですが、驚きました。私としては、「こんな組織の活性化の方法がある」というふうに受け止めてもらえるかなと思っていたのですが、まず勤怠管理をきちんとしていないから、残業削減すらまだしていない企業が多かった。私は、世の中はもうそんなことは当たり前に取り組まれていて、次の段階として組織活性化が課題だと思っていたのですが、現状はそうではなかったようです。残業削減を訴えるお役所は正しかったんだと思いました(笑)。

 でも、間違いなくこれからは残業削減だけでいいのか問われると思います。その1つの方策として、私たちはチャレンジを始めました。今のところ、うまくいっていると私は思っています。2021年春に入社する新入社員は、全員が個人事業主になることを前提として採用するつもりです。その頃には、この制度の白黒がつくでしょう。