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経済産業省は7月3日、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い低効率な石炭火力発電所の休廃止を進めると表明した。13日には削減に向けた制度設計の議論を始めた。背景には何があったのか、石炭火力の休廃止は今後、国のエネルギー政策にどのように影響していくのか。エネルギー産業論を専門にする国際大学国際経営学研究科の橘川武郎教授に聞いた。

梶山弘志経済産業相が、二酸化炭素(CO2)を多く排出する低効率な石炭火力発電所の休廃止を進めると表明しました。

橘川武郎(きっかわ・たけお)氏
国際大学国際経営学研究科教授。1951年和歌山県生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。青山学院大学経営学部助教授、東京大学社会科学研究所教授、一橋大学大学院商学研究科教授、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授などを経て2020年4月から現職。専門は日本経営史、エネルギー産業論。著書に『石油産業の真実』『電力改革』など。

橘川武郎氏(以下、橘川氏):石炭火力をフェードアウトするという部分が注目されていますが、同時に、高効率の石炭火力については続けていくということを経産省が宣言したとも言えます。私はむしろ、高効率の石炭火力維持が本質ではないかとみています。

 全国にある石炭火力140基のうち、114基が旧式の低効率の発電所とされています。その9割が休廃止になる見込みです。基数でみればほとんどが低効率ですが、出力ベースでみると半分程度にとどまります。低効率の石炭火力は出力が小さいものが多く、新型の高効率の石炭火力の多くは出力が大きいのです。

多くの人が「経産省が石炭火力をやめる方向に舵(かじ)を切った」とみているのではないかと思います。

橘川氏:効率の悪い石炭火力を休廃止して高効率なものに変えていくという方針を、経産省は2018年に出した第5次エネルギー基本計画でも示してきました。今回もその通りのことを言ったにすぎない。政策転換とは言えないでしょう。

石炭火力は、環境負荷が大きいとして海外からの風当たりが強くなっていました。