東芝は7月8日、法令順守強化へ「コンプライアンス有識者会議」を設置したと発表した。子会社の東芝ITサービスで発覚した、循環取引後の再発防止策の一環。社外から東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)の免震ゴム偽装問題で社外調査チーム代表を務めた弁護士の小林英明氏と公認会計士の神林比洋雄氏を招き、東芝の車谷暢昭社長兼CEO(最高経営責任者)や監査委員会を含めたメンバーで再発防止に努める。
子会社の循環取引問題を巡っては、筆頭株主で15%強の東芝株を保有するシンガポールのファンド、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが東芝の対応を疑問視。7月31日にある東芝の株主総会へ向けて、竹内朗氏、杉山忠昭氏、エフィッシモ創業者の今井陽一郎氏の3人を社外取締役として選任する株主提案が出ている。同じくシンガポールに拠点を置く3D・オポチュニティー・マスター・ファンドからは2人の社外取締役の選任を要求されており、東芝はこれら2つの提案に反対する姿勢を表明済みだ。
今回の「コンプライアンス有識者会議」はどういった経緯で生まれたのか。そして、東芝経営陣に攻勢をかける「アクティビスト(物言う株主)」とどう対峙していくのか。東芝の社外取締役で今回の有識者会議のメンバーである太田順司・監査委員会委員長に聞いた。
7月8日に法令順守強化のため「コンプライアンス有識者会議」を新設しました。子会社の東芝ITサービスでの循環取引の問題で、2月に最終報告を発表した際は言及のなかった組織で、6月5日の決算会見で内部統制システムの新たな強化策として突如出てきた印象を受けます。改めて、設置の経緯を教えてください。

東芝社外取締役、監査委員会委員長、指名委員会委員
1948年生まれ。71年、新日本製鉄(現日本製鉄)入社。2001年同社取締役、05年常務取締役、08年常任監査役を経て12年常任顧問。14年日本証券業協会自主規制会議副議長、16年同協会副会長、自主規制会議議長。18年から東芝社外取締役(写真:北山宏一、以下同じ)
東芝の太田順司・監査委員会委員長(以下、太田氏):昨年11月に今回の循環取引に関して国税局から調査の打診を受け、東芝内部でも調査を進めてきました。1月18日に中間報告、2月14日に最終報告を開示したという流れです。
最終報告のタイミングまでは、外部の有識者を招く今回の「コンプライアンス有識者会議」を設置するという意識はなかった。3~5月にかけて主要株主であるエフィッシモや他の方々から「この問題はどうなっているのか」という問い合わせを受けました。社内でも、外国籍の社外取締役を中心に「グループとしてガバナンスは問題なかったのか」との声が出てきました。こうした声を真摯に受け止め、徹底的に見直すことになったのです。
一連の議論の中で、社内関係者だけでなくより多くの企業の不祥事に関わった専門家を招いて、「問題への対応が十分かどうか」「対策として付け加えることがないか」の2点に絞って総ざらいしようと。そこで5月の決算説明会で、社長の車谷(暢昭氏)から有識者会議の設置を公表したわけです。
今回、コンプライアンス有識者会議を設置したことで、2月の最終報告が拙速だったとの声もあります。
太田氏:ほぼ同時期に他の上場2社も最終報告を出しています。今回の循環取引で主導的な役割を果たしたのはネットワンシステムズなのは一致しています。調査には2~3カ月間かけていますし、拙速だとは思いません。
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