エバーノート創業者で、現在はビデオ会議の新サービスmmhmmのCEOを務めるフィル・リービン氏にコミュニケーションの未来について語ってもらった。mmhmmはビデオの作成・視聴・会話が行えるウェブアプリだ。ビデオ会議サービス「Zoom」「Google Meet」「Microsoft Teams」などでも使用可能で、よりクリエーティブなビデオ空間を生み出すという。

 新型コロナウイルス禍にはリモートワークやオンライン会議が浸透したが、最近では徐々に出社する人が増えつつある。リービン氏は「ポストコロナ時代もリモート勤務は続く」と確信を持っているが、それはなぜか。新しいコミュニケーションのあり方とは。

フィル・リービン(Phil Libin)氏。
フィル・リービン(Phil Libin)氏。
米オールタートルズと米mmhmmの創業者であり、最高責任者(CEO)。クラウド上にドキュメントを保存するエバーノートを創業し、2007年にCEO就任。15年にCEOを退任。その後はベンチャーキャピタリストとしてスタートアップへの助言や投資を行っていた。

以前より新型コロナウイルス感染拡大が落ち着き、日本では出社する人が徐々に増えています。

フィル・リービン氏(以下、リービン氏):「リモートか出社か」は正しい選択肢ではないと思います。企業は「集約型と分散型」のどちらになりたいかを考えるべきです。

 集約型は特定の場所に集まる必要がある仕事。例えば工場、飲食、病院などですね。一方、パソコン業務や頭を使う仕事などは場所に縛りがないため、分散すればいい。慣れるのに時間はかかるでしょうが、メリットの多い分散型に変わっていくでしょう。「サンフランシスコ在住のエンジニア」などと選択肢を狭める必要もなくなるわけですから。

 不要な出社を社員に強いている企業は、とんでもないハンディを自ら背負っている。将来的には倒産する恐れがあります。「出社の必要はない」「どこで働いてもいい」と気がつくのが早ければ早いほど、優秀な人材を獲得できるし、企業として成長できる。すでに気がついた企業は増えているので、次の数年間で変わるのではないでしょうか。

 1つ強調したいのは、分散型は「在宅勤務」とは限らないということです。リモートワークと聞くと、多くの人が「在宅」を想像していると思うんです。本当は「どこからでも勤務」です。最も生産性の良い、美しい場所で勤務できるのです。会社のオフィスは最低限の労働環境は整っていますが、それ以上に快適な場所はありますよね。

 私は美術館や民泊、カフェなど多様な場所で働いています。新型コロナウイルス感染拡大直後には、急に家での勤務を強いられ、決して快適な労働環境ではなかったでしょう。しかし、感染拡大から2年がたち、環境を整える時間はありました。私はサンフランシスコから引っ越し、家賃が以前の5分の1ほどの、とてもすてきなエリアに住んでいます。

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