「デジタル庁」新設などを含むデジタル改革関連法が2021年5月12日、参議院本会議で可決、成立した。これによって、日本政府はコロナ禍で露呈した脆弱な行政のデジタル基盤の早期再構築を急ぐ。指揮を執るのは、9月に正式に新設されることになったデジタル庁だ。これまで横たわっていた省庁間の縦割り行政を改め、強い権限を持ってデジタル社会の形成を急ぐ。

 新法成立とともに廃止となるのが、01年に施行された高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)だ。政府は20年もの間、行政の電子化を進めながら「デジタル敗戦」(平井卓也デジタル改革担当大臣)を繰り返してきた経緯がある。今回のデジタル改革関連法で本当に日本にデジタル社会は到来するのか。関連法成立に向けて動いてきた自民党デジタル社会推進本部事務総長の小林史明衆院議員に話を聞いた。

自民党デジタル社会推進本部事務総長の小林史明衆院議員(撮影:的野 弘路)

デジタル改革関連法が国会で成立した。この意義は?

 日本社会におけるパラダイムシフトと捉えている。今回、自治体システムの共通化などが盛り込まれているが、これはシステムがインフラであるということを国家的に整理したことにほかならない。道路の車線は左側通行と国がルールを定めているから、自治体をまたいでも安心して運転できる。現代における行政システムも同様だ。インフラとして認められた意義はとてつもなく大きいと感じている。

 

 今でも覚えていることがある。私は大学を卒業後NTTドコモに就職し、その後12年の第46回衆議院選挙に出馬して初当選した。13年の国会で初めて国会で質問の場に立ったとき、当時の新藤義孝総務大臣に自治体のシステム一本化を投げかけ、地方自治体に向けて統一クラウドを用意すべきだと訴えた。

 そういう意味では8年の時間を要したが、ようやく扉が開いた感じがして感慨深い。課題は認識されていたし、私自身も常に言い続けてきたが、それでもきっかけとなったのは新型コロナウイルスの感染拡大だったと思う。国民全員に1人当たり10万円の特別定額給付金をスムーズに届けられなかったインパクトは大きく、一気に動いた。

この20年を振り返り、行政のデジタル化で国民の感じられるメリットはほぼ無かったに等しい。今回のデジタル改革関連法の成立でどのようなメリットが感じられるようになるのか。

 1つはワクチンだ。現在、予約で大変苦労されている人が多い。約1700の地方自治体が予約システムを個別に構築せざるを得なかったことが理由だ。本来であれば地方自治体にとってシステム構築は得意領域でもなく大きな負担だ。現在、子供のワクチン接種は複数回の予約から予診票の記入があり、大変煩雑になっている。今後、予約から接種記録、医療機関への支払いをワンストップでできるようにしたい。こうしたインフラに当たる部分はデジタル庁が構築する。浮いた余力で、各自治体は地域住民に手厚いサポートができるようになる。

 もう1つはマイナンバーと口座連携が可能になる点だ。特別定額給付金や緊急で必要になる助成金といった取り組みがスピーディーに実現できるようになる。国民が困難に陥ったとき、すぐに手を差し伸べられるようになる点は大きい。困っている人ほど情報にアクセスするのは難しいからだ。

続きを読む 2/3 システム標準化で「はんこ」が不要に

この記事はシリーズ「インタビュー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。