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 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、森トラスト・ホテルズ&リゾーツは全国で運営するホテル19施設のうちリゾート型17施設、ゴルフ場2施設について、4月20日から5月6日までの間の営業休止を決めた。インバウンドの拡大などを背景に好調だったホテル業だが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は一変。ホテルのみならず、好景気に沸いてきた不動産市況全般が変調している。臨時休業を決断した背景や、ホテル業や不動産業の現状と先行きについて、同社社長であると同時にデベロッパー・森トラストの代表取締役社長でもある伊達美和子氏に話を聞いた。

伊達美和子(だて・みわこ)氏
慶應義塾大学大学院修了後、総合コンサルティング会社勤務を経て、1998年森トラスト入社。2011年に森トラスト・ホテルズ&リゾーツ社長、16年に森トラスト代表取締役社長に就任。両職を兼務する。全国に19のホテルプロジェクトを推進する傍ら、2020 年3月に竣工した虎ノ門・神谷町エリアにおける複合施設「東京ワールドゲート」や、赤坂ツインタワー跡地における「赤坂二丁目プロジェクト」といった複数の大型都市開発を推進している。

4月20日から5月6日まで、運営するリゾートホテル17施設とゴルフ場2施設のすべての休業を決めました。理由を教えてください。

伊達美和子社長(以下、伊達氏):緊急事態宣言の対象が全国に広がったことが第一の理由です。地域間の移動を制限して感染拡大を防止したいという政府の方針が出たことで踏み切りました。

 私自身も、4月の二週目に入ってから全国で感染者数が増えていることを憂慮していました。各ホテルの稼働率は昨年と比べて低いとはいえ、皆無ではない。ゴールデンウィークの予約はそれなりに存在している。このまま営業していれば、首都圏からホテルのある地方のリゾート地への人の移動が起きてしまうと考えました。

 われわれのリゾート地のお客様の約8~9割は、最初に緊急事態宣言の対象となった7都府県から来ます。感染拡大を助長する受け皿になる可能性を考えて、休業要請の対象施設ではありませんが、自ら先行して休業を決めました。

地方の首長からは、来訪の自粛を求める声も相次いでいます。

伊達氏:ホテルや交通インフラ、商業施設といった人を集める装置が止まるような状況にもっていかない限り、感染拡大は防止できないと考えています。自治体が「来ないでください」と呼び掛けるだけではやはり限界があります。移動を自粛する個人の努力と、人を集める装置の運営を休止する企業の努力、双方が必要でしょう。

 観光業というのは経済活動があって初めて存在するものです。このまま感染が広がり、景気が悪化すれば、観光に対するニーズはますます小さくなってしまう。つまり観光事業者が第一に考えるべきなのは、感染拡大の防止であって、そのためには関係者がそれぞれ、痛みを甘受しなければなりません。

 また、ホテル単体で見れば、車で移動してホテルの部屋の中で過ごすのなら問題ないよねということも通用するかもしれませんが、仮に発症した場合には地域の医療施設を使うことになるわけです。地域の医療施設というのは本来、住民のためにあるものであって その需給バランスで受け入れ可能な枠が決まっています。地域外からの患者が急増すれば、医療破綻を招きます。

 関係事業者や、すでに予約をいただいていたお客様にも休業について説明していますが、だいたいにおいてご納得をいただいています。