新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、人との接触8割減を要請している政府専門家会議。在宅勤務が広がる中、ビジネスシーンにおける出会いの形が急変している。日本に根強く慣習として残る名刺交換は対面でのコミュニケーションが前提だが、この状況下では初対面がビデオ会議ということも珍しくなく、互いの情報を交換し合う手段が多様化・複雑化しているのが実情だ。

 日本の名刺文化はこのまま廃れていくのか。企業向けの名刺管理サービス「Sansan」、個人向け名刺アプリ「Eight」の2つのサービスを提供するSansanの寺田親弘社長に話を聞いた。

Sansanの寺田親弘社長(写真/的野 弘路)
Sansanの寺田親弘社長(写真/的野 弘路)

新型コロナの事業への影響は。

 3月に開催予定だったカンファレンス「Sansan Innovation Project 2020」を2月下旬に中止を決めた。それからほぼ毎日、新型コロナ対策会議を開き、事業継続計画(BCP)について議論してきた。とにかく日々、状況が悪化していく。働き方も最初は「在宅勤務可」だったが、「在宅推奨」になり、「原則在宅」になり、最後は「出社禁止」となった。

 短期的に見れば、新規顧客の獲得に影響が出るのは必至だ。企業がこのタイミングで新たなソリューションを導入することは難しくなると判断し、新規顧客開拓から既存顧客のサポート拡充へとリソースを配分した。ビデオ会議ツール「Zoom」など一部を除けば、新型コロナによる悪影響は等しく様々な領域に悪影響を及ぼすだろう。だが、経営という観点から今回の新型コロナを捉えると、「守り」と「攻め」、両方を考えなければならない。事業として伸ばせるところはどこなのか検討しつつ、先が読めない中で社員の採用計画に幅を持たせた。

 オフィスのあり方を再定義しようというプロジェクトも始めた。例えば、Sansanではこれまで本社の近隣に住む従業員に対して家賃にかかる費用の一部を補助する制度を設けてきた。だが、今回のような在宅勤務を余儀なくされる中で、日本の住環境がはたして仕事をするのに適しているのかという疑問も湧く。例えば、会社の業務スペースを無くす代わりに、従業員には一部屋多い物件に引っ越ししてもらい、業務スペースを確保してもらう。そして、これに対して補助を出すという制度も考えられる。こうした模索を続けている。

事業の根幹に「名刺」を据えている。新型コロナで対面でのコミュニケーションが難しくなっている。

 我々は「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに事業を展開してきたが、そのツールとして名刺を使っている。今回の新型コロナの登場は、改めて自身の事業について考えるきっかけになった。濃厚接触を避けなければならないこのような状況下で、今、初めての出会いがビデオ会議ツールなどに移行し、非対面化が進んでいる。名刺はこれまでとかく「日本特有の文化」や「古き悪しき慣習」などと言われることもあったが、非対面時代に入り、改めて名刺交換が有益な行為だったと再認識する声がユーザーから聞こえてくる。

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