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 2020年春卒業予定の大学生の就職活動が3月から本格的にスタートした。「KISSME」ブランドで知られ、創業190年を超える老舗化粧品メーカー、伊勢半が「顔採用」を打ち出して話題を集めている。容姿で選ぶわけではないのに、「顔採用」と銘打った狙いを人事労務部の隅田靖部長とデジタルマーケティング・広報宣伝部の大町龍部長に聞いた。

顔採用としている新卒の選考方法について教えてください。

隅田靖部長:新卒採用は総合職、研究職、商品企画部・広報宣伝部の3部門に分かれています。顔採用は、3つ目の企画・宣伝の部門で実施しています。エントリーは弊社ホームページかインスタグラムからで、自分らしさを表現した写真・動画3枚以内と、「私らしさ」について200文字程度の文章で表現したものを提出してもらいました。エントリーを通過した人は会社説明会に参加してもらい、エントリーシートの提出や面接を経て、最終的に顔採用では2人を採用する予定です。面接でも服装とメイクは、自分を表現するスタイルで参加してもらいます。

「型にはまらない自由な発想を持つ人材を求めている」と話す隅田氏

実際は顔で選ぶわけではないのですね。それなのに「顔」だと広くアピールした目的は何ですか。

隅田氏:目的は大きく分けて2つあります。1つは画一的な就活スタイルに疑問を投げかけたかったのです。女性の場合、リクルートスーツを着て、髪型は後ろで結んで前髪は斜めといったスタイルが定番になっています。みんなが同じ格好で選考に臨むことを常々疑問に思っていました。顔採用と打ち出すことにより、「もっと個性を表現してほしい」という学生たちへのメッセージを込めました。もう1つは企画立案部門なので型にはまらない自由な発想を持つ人材を求めているからです。「私らしさ」をいかに表現するか、それを軸に選考に臨みたいと考えています。

採用にインスタグラムを取り入れるのも珍しいですね

大町龍広報宣伝部長:学生が日常で自分らしさを表現するツールとしてインスタグラムは普及しています。それを使って就活をすることに学生も違和感はないでしょうし、「普段通りの自分を表現してもらう」という意味では最適なツールだと思いました。200文字という字数も文字制限のあるSNSを意識したものです。

「200文字という字数は文字制限のあるSNSを意識した」と語る大町氏

顔採用は誤解も受けかねない言葉ですが、社内でも論議を呼んだのでは。

大町氏:もちろん強烈なメッセージですし、ご想像の通り「容姿で取るということか」といった誤解を受ける懸念はありました。社内の経営層からは「『顔採用』という言葉を使った投げかけ方はどうなのか」との反応もありました。それでも「『私らしさ』を表現するための顔採用」はKISSMEのブランドメッセージとも合致しているという結論に至りました。社内の共感は比較的早い段階で得られましたね。

ツイッターやネットニュースで顔採用が何度も取り上げられています。目を引くことで狙い通りに応募数も増えたのではないでしょうか

隅田氏:エントリーは前年比で2倍以上になりました。顔採用が話題の中心ですが、総合職や研究職の応募も増えています。話題性を高めて、企業としてのブランド価値も向上できたと実感しています。

大町氏:19年春の採用実績は大卒が21人でした。20年春に向けては全体で数千のエントリーをいただいていて、倍率がかなり上がっています。普通なら弊社を受けなかったという人も「自由な発想で商品を企画したい」「発信するのが得意だ」とエントリーするきっかけになっていればうれしいですね。