日本の行政はありとあらゆる場面で民間に対し対面の原則や押印主義を強いてきた。

 2019年にはデジタル手続法(デジタルファースト法)を巡って、はんこ文化の存続を求める印章業界が抵抗、法人設立登記における印鑑届け出の任意化が盛り込まれなかったことは記憶に新しい(関連記事:文化保護か、効率化か はんこ大戦争の舞台裏)。

 新型コロナウイルスのまん延は、従前の原則をもはや維持できない状況をもたらしている。人命に関わるがゆえ、ありとあらゆる慣習が見直される必要に迫られているといっても過言ではない。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自由民主党行政改革推進本部の規制改革チームは2020年4月6日、政府に対してデジタル規制改革の緊急提言を行った。初診患者のオンライン診療、オンライン教育の環境整備、書面や押印が原則となっている行政手続きなどの規制見直しを求めたものだ。

 自民党青年局長で行政改革推進本部規制改革チーム座長を務める小林史明衆議院議員に今回の緊急提言の狙いについて話を聞いた。

自民党青年局長兼行政改革推進本部規制改革チーム座長の小林史明議員(撮影:村田 和聡)
自民党青年局長兼行政改革推進本部規制改革チーム座長の小林史明議員(撮影:村田 和聡)

新型コロナウイルス対応において「デジタル規制改革」「オンライン診療」などの緊急提言を政府に提出した。この狙いは何か。

 私は政策を実現するためには三つの要素が必要だと思っている。「共通の課題認識」「リーダーシップ」、そして「具体的な事実に基づく解決策の提案」だ。

 今回のコロナウイルス感染拡大では、人と人が出会うということに対する問題意識が急浮上している。民間企業はテレワーク実施などでこうした状況を回避する努力を続けているが、それでもはんこを押すだけのために出社している人がいる。こういう人たちを守らなければならない。改革のための環境が整っている今、求められているのはリーダーシップ。デジタル化を阻んできたアナログな原則を今こそ撤廃できるのではないかと考えている。

 とにかく、人が人と会わなければならない瞬間を少しでも減らすことが重要だ。そして、国はこの一点において全力を尽くすべきだと考える。やれるものはすべてやる気概で臨まなければならない。

 もちろん、従前の原則撤廃に対して抵抗感を覚える業界があることも認識しているし、こうした意見を全否定するつもりもない。「触診」という言葉があるように、医療の現場で対面での診察が重視されていることは十分理解している。今回、それでも初診を含むオンライン診療の実現に一定のめどがつきそうなのは、現場で対応に当たっている医師にとってもリスク軽減につながるためだ。感染拡大を抑制するために、対面ではなくても患者と接する機会が持てる効果は大きい。

 恒常的ではなく、とりあえずは時限的な対応として進められればと考えている。そもそも、日本は何をするにしても「ゼロか百か」で、やるかやらないかの議論が平行線をたどり遅々として進まないということが多かった。規制改革を進めていく上で重要なのは、「まずやってみる」ということ。指摘されているような問題が起きるのであれば変えていけばいい。気づかなかったような問題が出てくるかもしれないし、想定以上のメリットがあるかもしれない。今回、時限的とはいえ一歩進めてみて評価しようという動きが広がっていることは、非常に価値がある。