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 英国の欧州連合(EU)離脱が迷走を続けている。金融センターとしてのロンドンの地位はどうなるのか。前ロンドン証券取引所最高経営責任者(CEO)で、英資産運用会社CQSのCEO、ザビエル・ロレット氏に聞いた。

ザビエル・ロレット(Xavier Rolet)
英CQS最高経営責任者(CEO)
フランス生まれ。1984年米コロンビア経営大学院修了後、米ゴールドマン・サックス証券からキャリアをスタートし、クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券(当時)、リーマン・ブラザーズなどを経て2009年5月、ロンドン証券取引所のCEOに就任。2017年11月に退任し、2019年1月から現職。

世界景気の現状をどう見ていますか。

ザビエル・ロレットCQS最高経営責任者(CEO) 多くの市場関係者や企業経営者と話をしてきたが、景気減速に対する懸念は広がっている。金利サイクルの終わりであるとか、1年半後には景気後退に向かうのではないかなどという議論が多い。だが、我々は必ずしもそのようには見ていない。

 足元の景気減速は、米中貿易戦争と昨年末から年初にかけての米政府機関の閉鎖という要因によるものが大きい。だが米国で歴史上最長になる政府機関の閉鎖が、短期的なGDP(国内総生産)成長率に対して全くインパクトがなかったことには驚いた。米国景気自体が構造的に減速していく中にあって、季節調整的な影響も加味すると、直接的な影響はごく表面的なものにとどまっているのだ。つまり現状でも、投資先を慎重に選べば、まだ多くの投資機会が得られるだろう。

日本の機関投資家に高まる「絶対収益」ニーズ

CQSはもともとヘッジファンドですね。

 私のゴールドマン・サックス時代の同僚でもあるマイケル・ヒンツェ氏が立ち上げたヘッジファンドが起源だ。現在はヘッジファンド業よりも、むしろ厳選した長期運用が主力であるグローバルな資産運用会社だ。資産運用残高は約200億ドル(約2.2兆円)にのぼる。当社のDNA(遺伝子)には「絶対収益主義」があり、それはヘッジファンド時代から変わらない。

 長年、日本の資産運用会社や年金基金と仕事をしてきた。日本国債など安全資産の長期金利が低迷傾向にある。景気は回復してきたものの高齢化は着々と進んでおり、年金基金から、相場の変動に関係なく安定的な収益をもたらす「絶対収益」に対するニーズが高まっている。

 人口が減少する中、保険業界や資産運用業界も試練に直面している。彼らも「絶対収益」を必要としている。個別の投資戦略を立案し、それぞれの顧客向けに投資商品を設計し、世界の金融市場への橋渡しをしている。当社の投資先はロンドンや香港をはじめ、オーストラリア、米国などの5カ所に拠点を置き、グローバルな投資が収益の大半を占めるようになった。

 地政学的な動向を加味した分析が、当社の強みだ。ポートフォリオマネジャーの多くは数理モデルを使って分析し、期待収益を計算するが、政治的な要素は通常、加味していない。