JTは2022年3月をめどに、希望退職の募集や工場の閉鎖などで、国内たばこ事業に携わる約3000人を削減する。健康志向の高まりで国内たばこ市場は1996年度をピークに縮小を続け、2019年度の販売数量は当時の3分の1にまで減少した。国内外でたばこ規制は強まり、次の成長の柱と位置付ける加熱式たばこでは海外の競合メーカーに出遅れた。国内たばこ事業のリストラなど一連の構造改革で、どういった戦略を描くのか。寺畠正道社長に聞いた。

1965年生まれ、広島県出身。89年京都大学工学部卒業、日本たばこ産業(JT)入社。英マンチェスター・タバコや、米RJRナビスコの米国外事業の統合作業に携わり、2008年経営企画部長。13年に取締役兼JTインターナショナル副社長。18年から現職
2022年3月までをめどに、希望退職の募集や九州工場(福岡県筑紫野市)の閉鎖などで3000人規模の人員を削減します。
寺畠正道・JT社長(以下、寺畠氏):日本国内では過去数度にわたって人員を適正化してきました。直近では13~16年に、約1600人の希望退職を募集しています。また残念ながら、この5年間で(喫煙率の減少という)構造的な要因で、国内たばこ事業は利益、販売本数ともに減少しています。
国内たばこ事業を取り巻く環境は先行き不透明で、今回提示したような(希望退職の)条件を今後提示できるか分からない。(現段階での人員削減が)経営側として真の意味での雇用責任だと考えています。
2019年10月には、海外たばこ事業を手がけるJTインターナショナル(JTI)でも人員削減を発表しました。JTは各国のたばこメーカーを買収することで海外事業を伸ばしてきましたが、曲がり角にきたということでしょうか。
寺畠氏:海外では、英ギャラハーの買収など20年以上にわたってM&A(合併・買収)をして、体質を強化してきました。ただ組織が拡大して複雑になったり、業務が煩雑になったりした面もあります。たばこ事業全体が非連続な変化の中にあり、各国での規制も相当厳しい状態にあります。今、手を打たないと今後の成長にネガティブに作用しかねません。
海外では3720人のポジション(役職者)を削減する一方で、1300くらいのポジションをつくっていく予定です。計画通り進んでいます。国内事業の適正化も合わせて、23年に一連の構造改革が終わった段階でだいたい400億円のコスト削減効果を見込んでいます。
たばこが新型コロナの重症化リスクの要因に挙げられるなど、たばこメーカーには逆風が吹いています。事業環境をどう認識していますか。
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