「水素燃料スタンド」がロードサイドに建つ日は来るか?

長井:今、言われたことは、大体こんなイメージだと思うのですが。

出所:千代田化工
出所:千代田化工
[画像のクリックで拡大表示]

長井:こちらは有機ハイドライド法のシステムを本当にシンプルに、最低限の要素で図式化したものです。この流れの中でいきますと、「貯蔵」というところから「脱水素」の間、今、ガソリンをガソリンスタンドへ運んでいるようなローリー車で運べるわけですから、確かに考え方としては成り立ちます。

おお。ガソリンスタンドが「水素燃料スタンド」になるかもしれない?

長井:ただし、この脱水素のために小さな化学プラントが、スタンドに必要になるわけですね。

それはあまり現実的ではないのでしょうか。

長井:供給すべき量に見合うものを考えると、やっぱりそれなりの大きさの設備が必要になります。今、街中にあるスタンドだとスペースが足りないかもしれません。とはいえ、貯蔵はガソリンなどと同じ消防法の規格にのっとったもので大丈夫ですから、スタンドの地下にあるタンクなどはそのまま使えるんですよね。地上に新しく作らなくてもいい。

新しい燃料を社会に導入していく上で、障壁が低いわけですよね。そういうところまで、もうお考えなんですか。

長井:実は考えています。ブルネイ-川崎間の実証実験は大規模に運ぶための検証をしているんですが、これとは別にNEDOさんの助成事業として、2016年、2017年にかけて、脱水素のための装置を街中のステーションなどに置けるように小型化する実証もやりました。

 その実証のときに目指したのは、システム全体を分割して、スキッド(底板がないパレット。大型の機械類の標準的な梱包に使われる)に乗せた状態で運べる大きさ、高さにすること。そういったことに挑戦して、それでも同じレベルの化学反応の性能を満たしております。なので、それを商品化していけば、水素ステーション向けにも使えるということになります。

※NEDO 水素利用技術研究開発事業(助成)「有機ケミカルハイドライド法脱水素設備の水素ステーション用小型化・低コスト化」 出所:千代田化工
※NEDO 水素利用技術研究開発事業(助成)「有機ケミカルハイドライド法脱水素設備の水素ステーション用小型化・低コスト化」 出所:千代田化工

本命はガスタービン発電向けとのことでしたが、ガソリンスタンドの置き換え、というのが面白いのでもっと聞かせてください。実際のサイズはどのくらいになるのでしょうか。

長井:あくまで「本命」の後に来る事業と認識していますが、その上で外にご説明できる範囲でお話ししますと、脱水素の反応を行っている部分のスキッドのサイズはおおむね、幅がトレーラーのぎりぎりなので3.2メートル、高さも道交法でトレーラーが運べるぎりぎりなので3.2メートルぐらいになると思うのですが、それは変わらないんですが、長さ方向が6メートルぐらいでしょうか。それが1つのスキッドに入る。

水素の純度を上げる装置も入っているんでしょうか。

長井:純度を上げるほうは別のスキッドになります。それについては細かく検討ができていないので……。

とはいえ、ガソリンスタンドに置けないサイズとも思えないですよね。

長井:ええ。例えば長距離トラックなどが止まる、比較的敷地の広いところがありますよね。ああいうところであれば、その端っこに並べて置けるということになると思います。

今、ガソリンはセルフ給油が多いじゃないですか。ああいう運用は難しそうですか。

長井:最近報道されたかと思いますが、我々のタイプではないタイプの水素ステーションが無人で運転できるようになったのですよ。そういう動きを何年かにわたって、いろいろ検査したり、対策を考えられて、やっと成立して規制が緩和されたと聞いています。

 我々の有機ケミカルハイドライド法について言うと、脱水素プラントはMCHとかトルエンを、それなりの量扱いますので、消防法上は実際には危険物製造に当たるような行為になります。なので、今の法規そのものでいくと、工業地域とか工業専用地域にしか、そういう設備は建てられません。

あ、そうなんですね。

長井:ということになっていますが、今、ガソリンスタンドに適用されている「給油取扱所」という分類がありまして、この有機ケミカルハイドライド法の装置も、給油取扱所の1つのタイプというふうになるよう、今、働きかけています。

水素技術は日本に新市場をもたらすか?

なるほど。FCVに“給水素”する場合なんですが、MCHから脱水素をやった上で、さらに精製して純度を上げた水素は、ガスの状態で出てくるわけですよね。あれ? FCVは冷却して液化した水素をタンクに入れているんでしたっけ?

長井:いえ、70メガパスカルに圧縮する必要がありますけれど、ガスはガスのまま自動車に入れます。

そうか、お恥ずかしい。MIRAIは水素をガスの状態で入れているんですね。

長井:ガスです。70メガパスカル、約700気圧のガスですね。

700気圧って、聞くだけで恐ろしいんですけど。燃料タンクも供給する側も、この気圧同士でつなぐわけですよね。すごい。

長井:やっぱり我々もプラント屋ですので、この数字には驚きます。世界中で見ましても、700気圧を必要とするプラントってまず普通はありませんから。水素の高圧ガス用のホースや、ディスペンサーのノズルを開発されている方々は、すごいエンジニアリングをされていると思いますね。運用で事故も起こっていませんし。弊社の話ではないですけど、そう思います。

よくぞ作ったものですね、と。

長井:やっぱり高い技術力が必要ですよね、その辺に関しては。

そういう意味では、もし水素燃料の使用が世界の主流になったら、技術差から日本にとってかなり大きな市場が生まれるのでしょうか。

次ページ 千代田化工が触媒を開発できた背景