データサイエンスは統計、情報、経営、心理などさまざまな学問の融合から生まれた。この分野の新しい取り組みについて、横浜市立大学准教授の小野陽子氏に聞いた。

データサイエンスとはどのような学問でしょうか。
小野陽子氏(以下、小野氏):データサイエンスは統計、情報、経営、心理などさまざまな学問の融合から生まれました。このため研究者によって捉え方に違いがあり、まだ明確に定まっていない面があります。
いずれにしても研究者の一人として、大切なのはデータサイエンスがどうやって人を幸せにするのかだと思います。データを使えばデータサイエンスになるのではありません。データを解析し、それが社会に広まっていくことが大切だと捉えいます。
こうした観点から考えたとき、データサイエンスは今後、ますますエモーショナルな方向に向かうのではないかと私は見ています。わかりやすく言えば、それはこれまで主観的に捉えてきた感情をデータを通じて客観的に示すことです。
「自分の10段階評価」には個人差がある
例えば病院で医師は「痛いですか」と尋ねるとき、「まったく痛くないのをゼロ、一番痛いを10としたら、今日はいくつか」といった聞き方をしてきました。しかし、この方法は「自分の10段階評価」という面があり、どうしても個人差が出てきます。そこには曖昧さがあります。
これに対して、データサイエンスは画像や音声などのデータを使いながら、「定常状態に対してどの程度変わるか」に基づいて、痛さの度合いを客観的に評価することを目指しています。主観に基づかない方法によって、人間のさまざまな面を明らかにしていくことができます。
現在、どのようなテーマに取り組んでいるのでしょうか。
小野氏:4月から実験をスタートする予定なのが、大学の授業において、学生がどれだけ満足しているのかについて、です。
ここでもアンケート調査に頼るのでなく、目の動きなど表情のデータや姿勢の変化などを定点カメラで撮影し、画像を使ってデータを測定します。
授業の満足度を測るのですから、データ集めの対象になるのは聞き手の学生だけでは不十分です。話し手も対象になります。
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