著名タレントがエバンジェリストになり、大手通販サイトのビューティー・コスメ部門で1位となるなどしました。マーケティング面からも、マスプロダクトの低価格帯とヘアサロン系の高価格帯の間というこれまで空白地帯だったところにブランドを立ち上げるなどユニークさが目立ちます。

 一連の取り組みと同時に注目しているのが、競合する大手の動きです。大手各社も気にしていて、ある会社は複数の「ファイティングブランド」を立ち上げたと私はみています。

 ファイティングブランドとは、市場のリーダーとなっている会社が競合ブランドを弱体化させることを主な目的として立ち上げるブランドを指します。ブランドとしての成長やヒットよりも、ターゲットに定めた競合の勢いを抑えることが狙いです。リーダーの戦略は市場に穴がないかをチェックすることでありいろいろな手を打つのですが、ファイティングブランドを立ち上げた例は国内ではあまりないと思います。

既存ブランドでも新しいカテゴリーができる

それだけ気になる存在だったのですね。

田中氏:私はブランドづくりにおいては新しいテリトリーを見つけるのが大切だと言っています。テリトリーとはいわば「縄張り」であり、これは自分が食べていく新しい場所を見つけることでもあります。

 わかりやすい例では、飲料メーカーのレッドブルのケースです。同社は飲料分野にエナジードリンクという新しいテリトリーを見つけたと私は捉えています。

 既存ブランドでもやり方によっては新たなカテゴリーをつくることができます。例えば、カルビーの「フルグラ」は新しいブランドではありませんが、”朝食として”とはっきりポジショニングしたうえでヨーグルトといっしょに食べる位置づけにしたことなどにより、シリアル市場でこれまでにないカテゴリーをつくり成功しています。フルグラはもともとのカテゴリーはシリアルだったのですが、それとは別のフルグラという新しいカテゴリーをつくった、と私はみています。既存の商材でもやり方次第では、新たなカテゴリーにできます。

ブランドづくりはどう進めたらいいでしょうか。

田中氏:ブランディングはタイミングが勝負の分野ではお金をかける方向に進んでいます。しかし、その一方で小さな世界でブランドを築くやり方もあります。これでなければいけないというのではなく、大切なのは「どうありたいか」だと思います。言い方を変えれば、ブランドというと誰もが知っている存在になる目標を思い浮かべがちですが、一方で狭い領域で評判をとればいいという面もあります。

 例えば、群馬県前橋市にある前橋国際大学は全国的にはそれほど有名ではありませんが、地元ではよく知られています。「群馬にあるグローカルな大学」という戦略に沿ったブランドづくりを進めているためです。

 同大学は全国から学生を集めるのではなく、あくまでも地元の人や企業のための大学として地元の学生を集めようとしています。何を身につけさせるかも明確で、一言で言えばそれは地域社会への対応力です。地元の有力企業とタッグを組んで、タイにあるこの会社の子会社に学生を送り、さまざまな課題に対して解決策を練るといったこともしています。

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