
3月10日に経営破綻した米シリコンバレーバンク(SVB)。その騒動の余波は今も現地を揺さぶる。シリコンバレーで創業したAI(人工知能)スタートアップ、フラクタの会長で「グーグルに会社を売った初めての日本人」としても知られる加藤崇氏が、騒動に揺れた当時の状況を語った。
安倍俊廣・日経ビジネス編集委員(以下、安倍):シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したのは、3月10日(金曜)のことでした。加藤さんは、いつどのようにして知ったのですか。
米フラクタ会長、加藤崇氏(以下、加藤氏):3月9日(木曜)の時点で既に、SVBの株価は大暴落していて、それを知らせる「Slack」や「Messenger」(のメッセージ)が社内外から急に増えたことで異変に気づきました。「今後、信用不安が生じるかもしれないから注意が必要だ」といったアラート(警告)が大量に流れてきて、何か大変な事態が起きそうだなと。
破綻「必要なかった」という意見も
ただ当時はSVBが倒産したり、取り付け騒ぎが起こったりするような事態になるとは、想像できませんでした。SVBが投資していた「モーゲージバック証券などの長期債で評価損が出た」といった話も聞きましたが、会社の預金を守るために、すぐに引き出す必要がある、とまでは思わなかった。フィクストインカム(確定利付き投資)取引で債券を売却したら、余剰金が残るだろう(だから破綻まで至らない)という見方がありましたから。
安倍:しかし実際にはその後、SVBは破綻に至り、「取り付け騒ぎ」も起こりました。
加藤氏:ええ、資金の流動性が極端に圧迫されて破綻に至ったわけですが、「破綻させる必要はなかったのでは」という意見もあるようです。僕はどちらかというとそうした見方をしていたので、流動性が圧迫される事態までは至らないと見ていました。これが水曜の夜から木曜にかけてです。
安倍:SVBが破綻した3月10日(金曜)時点での、フラクタの状況はどのようなものだったのですか。
加藤氏:金曜の早朝に、(サンタクララにある)会社(=フラクタ)幹部とリモート会議をしていて、社長とは「SVBには信用リスクがあるらしいから、当社の預金を半分ほど他行に移すか、あるいは残しておいても大丈夫か」といった議論をしていました。

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