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集まり、議論することを禁止できる

国民の目を塞ぎ口を封じる、というのは具体的にはどういうことですか。

山尾:この法律は国民の行動を広く縛ることができます。まず、45条で国民に外出の自粛を要請することができるとしています。

(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条
 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。

「要請」は「命令」ではないのですよね。

山尾:その通りです。しかし、同条の2項と3項に進むと、学校、保育園、老人ホームといった施設の使用禁止を指示することができるとしています。「指示することができる」というのは、罰則規定こそありませんが、命令できるということです。

第四十五条

2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる

 この部分を援用すれば、緊急事態措置を宣言した根拠をただすための議論をする市民イベントさえ禁止できることになります。これが冒頭でお話しした「口を封じる」行為です。「この法律が定める私権制限は抑制的」との見方もありますが、私はそうは思いません。宣言の是非を国民が話し合う機会を奪う可能性すらある措置なのですから。

集会を禁止するというのは、明治の「集会条例」以来、政府が反対派を抑えるのに使ってきた常とう手段ですね。

「指定公共機関に必要な指示をすることができる」が意味するもの

山尾:さらに、国民の目も塞ぐことができます。首相が民放テレビ局に指示することができるのです。

それはどういうことですか。

山尾:本文に直接的に書かれているのではありません。しかし、いくつかの条項を組み合わせると、そのように運用ができるのです。3月11日に開かれた法務委員会の質疑に内閣府を呼んでただしました。順に説明しましょう。