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 伊藤忠商事から敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられているデサント。資本の論理で経営の主導権を握ろうとする伊藤忠にデサントは反発を強めるが、その理由はどこにあるのか。田中嘉一・取締役専務執行役員に聞いた。

田中嘉一取締役専務執行役員は最高製品責任者(CPO)を兼ねる。生え抜き幹部の一人だ。

伊藤忠のような巨大企業となぜ、対立することになったのでしょうか。

田中嘉一取締役(以下、田中):企業規模でいえば、伊藤忠が巨象で我々がアリのようなものだ。そして伊藤忠は今も今後も当社にとって最大の取引先で、筆頭株主でもある。当然、リスペクトはしているし、伊藤忠を排除する気もない。だが言うことは言わなければいけない。

 最大の取引先であり筆頭株主でもある立場だと、どうしても利益相反が起きてしまう。伊藤忠の商売のやり方には少々行き過ぎた、逸脱しているものがある。我々デサントの取締役としては善管注意義務違反もあり、伊藤忠が求めるようなあえてコストが上がる商流の付け替えなどは看過できない。以前のようなあからさまなことはなくなったとしても、今後を考えるとそこはやはり心配になる。我々は伊藤忠以外の少数株主の利益を毀損することは避けなければいけない。決して単に情緒的に反対しているわけではない。

TOB後の伊藤忠は4割の株を持ちます。資本の論理を考えると、株主総会で取締役選任議案に反対された場合、田中さんを含め現経営陣がクビになる可能性が高い。それでもなぜ戦うのですか。

田中:確かに今回のTOBは失敗しないTOBであり、伊藤忠に4割の株を持たれるだろう。そうすると株主総会で厳しいのも理解はしている。自身の保身を考えれば当然、長いものに巻かれた方がいいし楽だ。しかし本当にそれがデサントという会社、従業員、ほかのステークホルダーの将来にとっていいことなのか。そこを考え覚悟をもって反対している。保身でもなんでもない。