共に「前田」の看板を背負う会社同士でなぜ争うのか。ゼネコン準大手の前田建設工業に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられた前田道路が、徹底抗戦の構えをみせている。インフラなどに投資し、運営や保守で稼ぐコンセッションを将来の稼ぎ頭に育成することを目指す前田建設は、道路舗装を手掛ける会社を抱えることは大きな意味があるとして、24%強の出資比率を51%に高めるべくTOBに動いた。一方の前田道路は、その動きに対しキャッシュリッチな自社を子会社化する“口実”だとの疑念を持ち、反発を強めている。その前田道路の今枝良三社長がTOB拒否の思いを語った。(聞き手:奥平 力、武田 安恵)

前田建設によるTOB(株式公開買い付け)を拒否し、次々に対抗策を打っています。まず会社の資産価値が大幅に下がる巨額配当を打ち出し、ほどなくして同業首位のNIPPOとの提携協議入りも発表しました。いずれも前田建設にTOBを断念させることが大きな狙いとみられますが、共に「前田」という看板を掲げながら、なぜかたくなに子会社化を拒んでいるのでしょうか。

前田道路の今枝良三社長(以下、今枝氏):前田建設さんには「交渉はしたけれど、決裂しました。だから敵対的TOBですよ」という既成事実を作られてしまいました。子会社化によるシナジーについて具体的な内容の説明もなしに、「TOBをお願いします」とばかり言われても、なかなか「うん」とは言えないでしょう。

前田道路の今枝良三社長(写真:竹井俊晴)
前田道路の今枝良三社長(写真:竹井俊晴)

 それにTOBの説明でこちらに来られたのは12月4日ですが、子会社化の是非の返事を12月20日までにしろと。一部上場企業の返事を待つのがたった16日間ですよ。それはできませんと。

 TOBという話は12月4日に唐突に出てきました。「(前田建設側に)正式に検討に値する提案書を出してほしい」とお願いすると同時に、前田建設の持つ株式をわれわれが買い戻して資本提携を解消することも提案しました。でも全く無視されて、年明けにいきなりTOBを仕掛けてきた。それが友好的な対応を求める手順なんでしょうか。

これまでも十分「上納」してきた

TOBに至る伏線は昨年5月に遡ります。2019年3月期の決算発表で、増配と自社株買いを打ち出しました。大株主である投資ファンド、オアシス・マネジメント(香港)の存在を踏まえてかと思います。こうした動きに対し、前田建設は「アクティビストの要求を聞くべきではない」と再考を求め、その約半年後に前田道路に対してTOBを申し出ました。

今枝氏:前田建設さんから「ファンドがTOBをかけようとしているから、自分たちがホワイトナイトとして友好的なTOBをするよ」と伝えられました(編集部注:前田建設側は否定)。でも、別に僕らはファンドから「TOBをかける」なんてことは言われていない。それはちょっと違うんじゃないのとは思いました。

 両社でシナジーを出そうという話の中で、(前田道路も含めた)グループのお金を、(前田建設が注力している)コンセッションを含めたインフラ事業や、ベンチャー企業への投資などに使いたいというお話があった。グループでやるなら、お互いに「この案件に出資しよう」という話をすれば済む話です。それが発展して、なぜ今進んでいるようなTOBという話になのか。ちょっと不思議です。

 前田建設があり、当社があり、東洋建設がある、そういうグループ全体で持ち株会社をまず作るのが普通の企業結合の形じゃないかと思います。一度、株式の51%を取って子会社化して、次のステップに進むというと、なかなか社員や当社の株主に対して説明がつけづらいということがありますよね。

続きを読む 2/3 子会社じゃないという自負がある

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