およそ20年にわたってゼネラル・エレクトリック(GE)会長を務めたジャック・ウェルチ氏が3月1日、84歳で腎不全のため死去した。同社の経営改革に「選択と集中」として知られる辣腕を振るい、20世紀最高のCEO(最高経営責任者)とも称された。「日経ビジネス」による同氏へのインタビューを再録する。時はリーマン・ショックから世界が立ち上がろうとしていた2009年1月。不確実性が再び世界を覆う今触れると、停滞を切り開いたリーダーの言葉はより響く。聞き手は当時の「日経ビジネス」編集長、寺山正一。

Jack F. Welch(ジャック・ウェルチ)氏
1935年11月、米マサチューセッツ州生まれ、73歳。マサチューセッツ大学卒業後、イリノイ大学大学院で化学工学を専攻し博士号を取得。60年、米ゼネラル・エレクトリック(GE)入社。81年GE会長兼CEO(最高経営責任者)に就任。統計学を駆使した品質管理手法の「シックスシグマ」、事業の選択と集中を進める「ナンバー1・ナンバー2戦略」など独自の経営で、GEを世界屈指の高収益企業に成長させる。2001年、ジェフリー・イメルト氏に後任を譲り、引退。今は執筆と講演活動の日々を送る。(写真:丸本 孝彦)

ウェルチさんは1981年から20年間にわたり米ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOを務め、その間に数々の困難を乗り越え、GEを高収益企業に育てました。退任後も常に経済情勢を分析されています。現在の世界的な経済危機をどう見ていますか。産業界には「1929年に起きた世界恐慌の再来」や「グローバル経済の崩壊」との声もありますが。

:1929年の世界恐慌と現在の経済危機とは多くの点で異なります。今、われわれはグローバル経済の中で生きています。世界規模の協調体制があり、資金の流動性がある。世界中の流動的な資金を金融システムに注入して迅速に問題を解決できます。貿易関税によって市場が閉じられていた30年代にはそうした体制はありませんでした。

 また30年代には銀行が取りつけ騒ぎを起こして機能不全になった。その後に米連邦預金保険公社が設立されたのです。しかし、今は預金がきちんと保護されます。そこは完全に違います。

 人間はいつでも「自分は最悪の時期に生きている」と思い込むものです。ウィンストン・チャーチル元英首相を例に取りましょう。彼は40年から45年にかけての戦時中にドイツによる爆弾攻撃を避けるため、地下に隠れて英国民を指揮していました。彼がここにいたら何と言うと思いますか。「かなりいい世の中だね」と語るでしょうね。

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