ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外したのは違法として、同市が高市早苗総務相に決定の取り消しを求めた訴訟の判決が30日、大阪高裁で言い渡され、佐村浩之裁判長は泉佐野市の請求を棄却した。

 2015年度の税制改正で、菅義偉官房長官が主導したふるさと納税の制度拡充に、総務省自治税務局長の立場で強く反対し、その後同省を去った立教大学特任教授の平嶋彰英氏は、制度の根本的な問題が裁判では議論されておらず、今回の判決をもって解決とはならないと訴える。

平嶋彰英(ひらしま・あきひで)
立教大学経済学部経済学研究科特任教授。1958年福岡市生まれ。81年に東京大学法学部を卒業し、旧自治省に入る。総務省財政課長、財政制度・財務担当の官房審議官、税務担当の官房審議官などを経て、2014年7月自治税務局長に。15年に自治大学校長に就任した後、17年に総務省を離れる。17年4月から現職。

ふるさと納税への法規制の導入をきっかけに、自治体と総務省の間で係争が起きています。

平嶋彰英氏(以下、平嶋氏):こういう事態にならないような制度を、本来はつくらなければいけなかったんです。反省すべき点はたくさんあります。07年に当時総務相だった菅氏の下で制度設計が検討されて、08年からスタートしましたが、見直すチャンスもありました。

それはいつですか。

平嶋氏:私が総務省の自治税務局長を務めていた15年度税制改正です。菅官房長官から寄付控除の上限を2倍にするよう求められていました。逆説的ではありますが、控除上限を倍増させるタイミングであれば、返礼品に何らかの制限を設けることにもみんな納得ができたのではないでしょうか。

それが制度の拡充だけが決まってしまった。

平嶋氏:返礼品の問題点を何とかしなければいけないということぐらいは聞いてほしかったですよ。しかも寄付先が5自治体以内であれば、確定申告しなくても控除が受けられる「ワンストップ特例」を導入して手続きまで簡単にしてしまった。すごく忸怩(じくじ)たるものがありますよ。

制度を拡充し使い勝手を良くしたことで、返礼品競争は一層過熱し、総務省からの自粛を求める通知は効果がなく、最終的には法規制の導入となりました。

平嶋氏:当時、菅長官には通知ではだめだと申し上げていたんです。やっぱりこうなったかという印象です。

拘束力のない通知では、返礼品競争は止まらないと。

平嶋氏:それもありますが、菅長官自身が、ふるさと納税で多額の寄付を集めた自治体をもてはやしていたわけです。健全な競争だと称して。一部の自治体の間では明らかに、総務省は菅長官には逆らえないだろうという雰囲気がまん延していました。

あくまで総務省が出した通知であって、政府全体の意思ではないと一部の自治体からは見られていたということですか。

平嶋氏:可能性は十分ありますね。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2519文字 / 全文3539文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「インタビュー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。