共働き夫婦が多数派となった日本。だが家庭での仕事は相変わらず女性に重くのしかかり、女性のキャリアアップの大きな足かせになっている。世界の共働き夫婦とキャリアの関係を調べた仏INSEADのジェニファー・ペトリグリエリ准教授に、世界のトレンドや解決策などについて聞いた。

このほど、成功している共働き夫婦のキャリアに関する研究をまとめた『Couples that Work』という本を出版しました。ご自身も共働きだそうですが、なぜ、このテーマに関心を持ったのですか。数年前にベストセラーになった、フェイスブックCOO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグ氏が書き、日本語でも出版された『LEAN IN(リーン・イン)女性、仕事、リーダーへの意欲』(日本経済新聞出版社)と似たものかと思いましたが、もっと自然体という印象です。

ジェニファー・ペトリグリエリINSEAD准教授(以下、ペトリグリエリ):よい質問ですね。確かに『LEAN IN』と似ているかもしれませんが、実はかなり違います。『LEAN IN』は女性だけに向けて書かれ、女性がどうやって男性の世界に入っていくかということに注目していました。

世界中で「共働き」が急増中

 私の研究は、ある統計を見たのがきっかけです。日本を含めた世界中を見渡して、共働きの夫婦が劇的に増えていることに気づいたのです。日本の45歳以下を見ても、70%以上のカップルが共働きですよね。しかも毎年かなり増え続けています。

<span class="fontBold">ジェニファー・ペトリグリエリ(Jennifer Petriglieri)<br>仏INSEAD組織行動学准教授</span><br> 1998年、英ノッティンガム大学卒業、遺伝学を修める。2004年にスイス・IMD、2008年に仏INSEADでMBA(経営学修士)取得。2011年にINSEADで組織行動学の博士号(Ph.D.)を取得後、米ハーバード経営大学院フェロー、INSEAD組織行動学助教授などを経て2019年から現職。
ジェニファー・ペトリグリエリ(Jennifer Petriglieri)
仏INSEAD組織行動学准教授

1998年、英ノッティンガム大学卒業、遺伝学を修める。2004年にスイス・IMD、2008年に仏INSEADでMBA(経営学修士)取得。2011年にINSEADで組織行動学の博士号(Ph.D.)を取得後、米ハーバード経営大学院フェロー、INSEAD組織行動学助教授などを経て2019年から現職。

 しかし、それぞれにキャリアのあるカップルが、互いのキャリアとどう向き合っているかについて、研究したものはありませんでした。具体的には、キャリアに、夫婦関係が与えるインパクトについてです。

 キャリアアップに対するアドバイスは無数にあります。『LEAN IN』も女性へのメッセージです。また、感情面や家族関係の変化に対するアドバイスもたくさんありますが、夫婦関係がキャリアにどう影響するかについての研究は、皆無でした。

 そこで、自分が研究して確かめようと思ったわけです。

良好な夫婦関係がキャリアに重要、ということですね。個人のやる気だけでは克服できない。

ペトリグリエリ:全然違います。カップルが円満であることが、キャリアにとって大変重要だということが分かったのです。

 パートナーと良好な関係を築いていれば、よりキャリアでも成功し得るのです。キャリアと夫婦関係は別々のものではないのです。それぞれが家庭でどう感じるかのみならず、夫婦関係が、仕事で成功し、素早く新しい役割をつくりあげ、そしてより早く出世することに影響するのですよ。

個人的な印象としては、キャリアを追求する人はむしろ家庭をおろそかにしがちなように思えますが……。

続きを読む 2/6 そもそも夫婦円満でなければうまくいかない

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