デジタルホールディングスの野内敦・代表取締役社長グループCEO(最高経営責任者)とラクスルの松本恭攝・代表取締役社長CEOによる「変わる覚悟」の対談第2弾、テーマは変革に伴う「リスク」だ。両氏は、変わるリスクにどう対峙し、乗り越えてきたのか。

変革にリスクはつきものです。変わることで得られるプラスよりも、失敗したときのマイナスを考えてしまい、変革に踏み切れない人も少なくありません。お二人は変革に伴うリスクをどう考えていらっしゃいますか。
野内敦・デジタルホールディングス代表取締役社長グループCEO(以下、野内氏):リスクはたくさんあります。並べたらきりがないくらい。ただ、リスクを並べたところで何もできません。リスクはリターンと表裏一体だと考えています。リターンを得るにはリスクを負わなければいけない。なのでリスクは覚悟しなければなりません。
社名の変更や中核事業の変革など、これまでにもいろいろなチャレンジをしてきました。ただ、失敗したらどうしようとはあまり考えてきませんでした。それは何もやらない方がむしろリスクが大きいからです。投資しないリスクと投資したリスク、どちらが大きいか。私は投資しないリスクの方が大きいといつも思っています。事業でも同じです。3年後や5年後の未来を考えて、例えば、世の中に今必要な事業や、日本企業が持続的に成長するために必要な事業に投資し、組織を変革していかなければなりません。やらない方がすごく後悔するでしょうね。
松本恭攝・ラクスル代表取締役社長CEO(以下、松本氏):私は、リスクはコントロールしながら取っていくものかなと考えます。リスクは大きく3つに分解できます。事業的リスクと組織的リスク、財務的リスクです。
事業のリスクは例えば、「ネットフリックス」が広告を入れたサービスモデルを導入したようなものです。ビジネスモデルの変革はリターンもあればリスクもある。そういう意味では、ラクスルは事業のリスクを大きく取るようなオペレーションはあまりとっていません。今までやってきた事業は継続しつつ、新しい領域を増やすようなイメージです。
その場合にはPL(損益計算書)上のリスクは発生します。新しい事業を始めることで投資額が大きくなると、利益が出にくくなるうえ、ほかの事業に投資が回りにくくなる。そのリスクはきちんと鑑みて、選択と集中によって回避する策を講じます。
1つの例が、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」のJV(共同企業体)化です。株式の50.1%をセイノーホールディングスさんに持っていただくことで、PL上の負荷を減らしつつ、ハコベルにもより大きな投資をすることができるようになりました。

野内氏:リスクを分解したうえでコントロールするというのが松本さんらしいですね。組織のリスクとはどういうものでしょうか。
松本氏:組織のリスクは、アロケーション(配分)をどうするかと、企業カルチャーにどのようなインパクトを与えるかを考えます。人員の配分に関しては、ラクスルの場合は新しい事業を始めるときに外から人を採るので、既存の組織を傷めるリスクはあまりありません。ただ、人が増えることによってPL上のリスクは出るので、やはりそこのマネジメントは必要になってきます。企業カルチャーはダイナミックに変えるのではなく、少しずつ毎年変えていくよう心がけています。何が良くて何がダメなのかという確かな部分は維持しつつ、徐々に進化させていくイメージです。
財務リスクに関してはかなり慎重に対応しています。PL上のリスクは先ほど話しましたが、BS(貸借対照表)上のリスクもあります。一発逆転を懸けたM&A(合併・買収)がそれで、のれんの償却額はどの程度まで耐えられるのか、リスクが顕在化した際にどれだけ資本を増強できるかなど、自分たちが許容できるリスクはどこまでかをかなり精緻に計算してコントロールしています。財務リスクを取らないと非連続な成長はできないので、ここのコントロールがとても重要ですね。
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