経営危機に陥っていた東芝の再生を託され、2018年4月に経営トップに招へいされた車谷暢昭氏。同年11月の中期経営計画の発表から1年強が経過した。19年4~9月期の連結決算は、営業利益が前年同期比7.5倍の520億円になるなど構造改革は着実に進みつつある。東芝にとって20年はどんな1年になるのか、車谷氏に聞いた。

<span class="fontBold">車谷暢昭(くるまたに・のぶあき)氏</span><br /> 1957年生まれ。東京大学経済学部卒業後、80年4月に三井銀行(現三井住友銀行)入行。2007年執行役員経営企画部長、12年三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員を経て、15年4月に同グループ副社長執行役員。17年4月に退任。CVCキャピタル・パートナーズ日本法人会長兼共同代表、シャープ社外取締役を経て18年4月から現職。(写真は北山宏一、以下同じ)
車谷暢昭(くるまたに・のぶあき)氏
1957年生まれ。東京大学経済学部卒業後、80年4月に三井銀行(現三井住友銀行)入行。2007年執行役員経営企画部長、12年三井住友フィナンシャルグループ常務執行役員を経て、15年4月に同グループ副社長執行役員。17年4月に退任。CVCキャピタル・パートナーズ日本法人会長兼共同代表、シャープ社外取締役を経て18年4月から現職。(写真は北山宏一、以下同じ)

2019年は東芝にとってどんな1年でしたか。

車谷暢昭氏(以下、車谷氏):一言で表現すれば、従業員が本当に頑張ってくれた1年でした。私自身、東芝に会長兼CEO(最高経営責任者)として来て、中期経営計画「ネクストプラン」を公表し、やらないとしょうがないという状態でした。懸案だったLNG事業の売却を含めて約束した構造改革をすべて実行し、財務を健全化できました。

 業績面では19年上期だけで前年同期比で451億円の利益を改善しました。米中貿易摩擦もあり、電機各社は減益傾向にある中で東芝は跳ね返せたわけです。このペースで進めば今期に4%の売上高営業利益率を確保し、V字回復を実現できそうです。これらは従業員一人ひとりのおかげです。私が経営トップに就任以降、1万6000の業務改善プロジェクトを進めた結果です。全従業員が参加してくれたのは非常に大きかった。

 東芝はこれまで、原子力、半導体、家電の会社と思われていました。いずれもシクリカル(循環的)で収益が出たり出なかったりする、ボラティリティーが高い事業で、大型投資も必要です。たとえ1000億円の利益が出ても、市場は10年先の成長を期待してくれません。

半導体メモリー事業を売却した際には、東芝にはコア事業がないとの批判もありました。

車谷氏:現在、東芝に残っている事業はエネルギーも社会インフラもリーマン・ショック時に影響を受けなかった事業ばかりでとてもステイブル(安定的)です。海外投資家は、東芝が半導体の会社だとみていましたが、完全にインダストリアルな会社に変わりました。長期保有の投資家にとっては大きな変化で、評価もしてくれています。

 ただ、ボラティリティーが高い半導体企業として捉えている投資家がまだ多いのも事実です。今年からは、業績がぶれない企業ということを説明していきます。東芝の場合、あまりに構造変革が早かったので、投資家が付いてこれないのかもしれません。東証1部に復帰できれば企業価値を適正化し、東芝の価値を再評価してくれるようになります。

 今年は、東芝が復活する1年、そして東芝が新たな会社に生まれ変わったことを市場で認めてもらえる1年にしたい。今はアクティビストも長期保有の投資家も、東芝株を一切手放していません。実際の評価とかい離していると考えているからです。地道な業務改革を続け、安定した事業ポートフォリオの中で市場での価値を高めるためにデジタル事業を強化していくのがポイントになるでしょう。

破壊的な変化への対応が問われる1年に

2020年、電機を中心とする産業界ではどういった動きが出てくるとみていますか。

車谷氏:ディスラプティブ(破壊的)な変化に対して対応できるかが問われる1年になるでしょう。東芝としては危ない事業の多くは切り離しましたが、こうした変化は加速しそうです。

 なんとなく持っていた事業が、気が付いたら利益が上がらない。そんな状況に陥りやすくなったといえるでしょう。我々だって今、家電を持っていたら営業利益率は上がらないし、半導体を持っていたら今期は営業損益段階で赤字です。収益が安定的で資本を使わないほうがバリューを出しやすい。

 中国が国家資本主義で経済原則を無視して巨額の投資を実施する中、家電や半導体などコモディティー分野は資本効率の面でも難しくなっています。日本は収益性や技術的に高いところに経営資源を集中すべきです。

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