地球の人口は2050年に90億人を超える見通しだが、それより早く30年ごろに「タンパク質危機」が到来しそうだ。新興国の所得水準が高まると肉や魚の消費量が急増し、飼料となる魚粉や穀物が不足すると懸念されている。
このタンパク質危機の救世主となりそうなのが、日本のフードテックベンチャー、ムスカ(福岡市)だ。

正確に言えば、救世主は「ウジ虫」だ。酪農家が排出する牛や豚、鶏などの畜糞に、ムスカが独自に品種改良したイエバエの卵をまく。8時間後には卵が孵化し、幼虫(ウジ虫)が糞を食べて分解、6日後には堆肥に変わる。幼虫はさなぎになろうとして自ら堆肥から出てくるため、回収して乾燥する。それを粉末にすれば魚粉を代替できる栄養価の高い飼料になる。
日本国内では年間8000万トンの畜糞が発生し、酪農家は処理に頭を悩ませている。酪農家から畜糞の処理を有償で受託し、生産した飼料と堆肥の販売収入も得られる。「一挙両得のビジネスモデル」だと、ムスカの串間充崇会長は話す。

19年秋に一日当たり100トンの畜糞を処理できる1号プラントを稼働させる。建設費は約10億円で、補助金を使わない場合でも6~10年で投資回収できるという。「世界20万カ所に設置できる」と、串間会長は試算する。
ムスカのイエバエは、もともと旧ソビエト連邦が宇宙ステーションでの食料の自給自足を目指して、短期間で繁殖し成長するよう、品種改良を重ねていたもの。ソ連崩壊後、国立の研究機関が権利を日本企業に売却。さらに串間氏がその事業を譲り受け、品種改良を続けてきた。「技術的には既に成熟しており、タンパク質危機を回避する決め手になり得る」と串間会長は言い切る。
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