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 読み終えるまで数時間はかかる書籍を、スマートフォンなどで10分程度で読めるようにまとめた書籍の要約サービスが広がりを見せている。要約で内容を理解してしまえば、全編を読み切る必要がなくなるとも考えられ、出版社や書籍取次、書店が警戒しそうなサービスだが、実際は連携が進んでいる。

 情報工場(東京・港)は12月25日、書籍取次大手のトーハンと資本業務提携の検討を開始することで基本合意したと発表した。情報工場が展開するサービス「セレンディップ」は、ビジネス書やリベラルアーツ関連の書籍をA4サイズ3枚(約3000字)にまとめて、10分程度で読めるダイジェスト版を配信している。情報工場は提携により、セレンディップで人気の書籍と書店の棚を連動させ、ビジネスパーソンが気になった書籍を帰りがけに買っていくという相乗効果を期待しているという。

セレンディップは書店や書籍取次との連携を進めている。写真は19年秋に設けられた「ブックファースト」のセレンディップコーナー(写真:情報工場提供)

 帝国データバンクによると、出版社、出版取次、書店の各売上高は10年前に比べて10~25%程度落ち込み、出版不況は下げ止まりの気配が見えない。一方、1年で発刊される新規タイトル数は7万超と横ばい基調だ。書店が減る中、棚に置かれている本が次々に入れ替わっており、日の目を見ないまま消えていく書籍が増えている。

 ECサイトなどで書籍を探そうにも、検索や購買の傾向を学習するアルゴリズムが、過去の履歴などを基にお薦めの商品などを提案してくるため、これまで関心がなかった分野の書籍に出合う機会が減っている。

 セレンディップはこうした状況を解消しようと「選書会議」でダイジェストを作る対象書籍を選んでいる。セレンディップの編集部メンバーだけでなく、現役ビジネスパーソンへのヒアリング、出版社や著者の推薦を取り入れることで、ラインアップを豊富にする努力を進めている。

 企業が書籍のダイジェストサービスを契約するケースも増えてきた。情報工場がセレンディップを始めた2005年ごろは、企業に売り込みに行っても「社員教育になるのは分かるが、費用対効果が分からない」と反応は悪かった。ところがここ3~4年、急激に契約が伸びているという。

 経営環境の変化が速くなり、業界を横断した知識を結びつけるようなイノベーションが求められているにもかかわらず、従業員が異分野に触れ、知識を得る機会は限られている。契約が増えている背景にはこのような企業の危機感があるようだ。日本たばこ産業や三菱商事、富士フイルムなどの大手企業を中心に約240社がセレンディップを採用。利用者は約8万人に上っている。

 時短読書のニーズは個人にも広がっている。フライヤー(東京・千代田)の会員数は、13年の創業から6年で、47万人に増えた。同社の要約は4000字程度。セレンディップが書籍の原文をできるだけ残してダイジェストを作るのに対し、フライヤーは出版社の元編集者や新聞記者、経営コンサルタント、歴史研究家ら約50人が、書籍の趣旨をくみ取ってまとめる形を取っている。

 フライヤーも書店や出版社との連携を進めている。イオングループの未来屋書店は約35店で、フライヤーで人気の書籍を集めた棚を設ける。紀伊国屋書店新宿本店や、丸善丸の内本店でも同様の取り組みを実施した。書籍に「フライヤーで人気が上位」といった帯を付ける出版社も出てきている。