いすゞ自動車の片山正則社長(左)とボルボ・グループのプレジデント兼CEOのマーティン・ルンドステット氏
いすゞ自動車の片山正則社長(左)とボルボ・グループのプレジデント兼CEOのマーティン・ルンドステット氏

 商用車国内大手のいすゞ自動車は12月18日、スウェーデンの商用車大手、ボルボと事業提携すると発表した。いすゞはボルボ傘下のUDトラックスを買収し、大型トラックを強化するが、いすゞとボルボとの間の資本関係は今回発生しない。いすゞとボルボは商用車でも対応を迫られている「CASE(つながる、自動運転、シェアリング、電動化)」といった先進技術の開発などで協業を進めるとしているが、資本関係なき「婚約会見」からは真の提携効果が十分にうかがい知れない。

 「両社が補完的に協力し合える関係だから、資本関係を結ばないと協業が加速できないということではない」。いすゞの片山正則社長は18日の記者会見で今回の提携が資本面に踏み込まなかった理由についてこう説明した。日本をはじめASEANや中近東の中小型トラックに強みを持ついすゞに対し、欧米を中心に大型トラックに強いボルボ。確かに得意な領域は異なる。

 直接の競争相手にはならないから技術開発などの領域で協業できるという言い分はもっともらしく聞こえる。しかし、「ボルボのボリュームに期待している」(片山社長)としながら、ボルボとの共同調達について「話し合いは具体化していない」(同)。あくまで、現時点で見えているのは買収するUDトラックスとの設計の共通化などでの部品コスト引き下げといった領域で、はっきりとした提携効果については今日の段階では両社ともに明言を避けた。

 いすゞとボルボが提携交渉のテーブルに着いたのは1年ほど前のことだったという。人手不足など物流業界が抱える課題を解決するというのが両社の共通認識。だが、両社が出資する研究開発会社といった受け皿がないまま全社的な提携の発表が先行したかたちとなり、交渉期間の割に具体的な協業内容が不足している印象もある。

 いすゞは2018年8月にトヨタ自動車との提携を解消した。両社で共同で開発・生産していたディーゼルエンジンそのものがなくなったためだ。いすゞは限定的な提携関係だったトヨタとも資本関係を結んでいた。それに対し今回は簡易的な資産査定段階で買収総額2500億円程度とされているUDトラックスの買収以外に資本の動きはない。

 いすゞのシェアが低い25トンクラスの大型トラックが得意なUDトラックスを傘下に収めることで、日本国内やアジアでのシェア向上につなげるという計算は成立する。ただUDトラックスはボルボと開発などのリソースを共有してきた。ボルボ傘下を離れてどこまで競争力を維持できるかは不透明だ。

 100年に一度といわれる変革期に突入し、自動車メーカーの競争力を大きく左右するCASE領域。提携の覚書一つで協業の果実を得ようとするいすゞとボルボの関係は、互いをパートナーとして尊重する「事実婚」として成り立つのだろうか。「我を捨てられない会社」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏)ともいわれるいすゞ。ボルボとの提携の行方から目が離せない。

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