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意外に苦労したのは「ページめくり」

スキャンと押印という2つの用途について、企画してすぐに実現したのでしょうか。

 いえ、かなり苦労しました。まず、「紙をめくる」のが難しかったんです。ただ、契約書などは裁断できませんし、裁断してスキャンするなら既存の複合機でもできる。どうやってめくってスキャンするかが課題でした。

 最初は2本のアームだけでめくろうとしましたが、難しい。そして、めくったとしても、紙がたわむのでスキャンできない。紙を押さえるための押さえや、紙をきれいにめくるためのスライダー、めくった紙を伸ばす器具など、様々な装置を追加してようやく実現しました。

そもそも、どうやって紙を1枚だけつかんでいるんですか?

 空気ですね。

空気? つまり、アームの先端で紙を吸い取っている?

 いえ、逆です。アームの先端から空気を吹き出しています。

?? なぜ吐き出すことで紙が持ち上がるのですか?

 エンジニアではないので正確な説明はできないのですが、微量の空気を吹き出すことで、紙の表裏に圧力差が生まれ、その圧力差が紙に浮力を与えるようです。ベルヌーイの定理で説明できる現象だと聞いています。

 最初は吸い取ろうと思ったのですが、吸った力で紙にシワが寄ったり折れ目がついたりしてしまってうまくいかず、開発サイドと議論するなかで「吹き出す」というソリューションが生まれました。

ロボットによる押印で苦労した点は?

 「ハンコを持ち替える」という点です。1種類なら簡単で、アームの先端に固定すればいい。でも、書類によっては2つ以上押す場合もありますよね。なので、ロボットが1回ハンコを置いて、別のハンコを持ち変えなければならない。その調整に苦労しました。今は2種類まで持てますが、5種類くらいまでなら持てるようにしたい。

 押印の場合は、まず書類を事前登録します。例えば「見積書」ならこの場所にこのハンコを押す、「契約書」ならこの位置に2つのハンコを押す、という内容を登録しておきます。登録さえしておけば、どのパターンの書類なのかは自動で判別します。例えば10パターンがランダムに積まれていても問題ありません。

ハンコには「向き」があると思うのですが、角度がずれることは?

 ロボットが最初にハンコをつかむ時の向きでそのまま押し、アタッチメントを変更する際に、そのハンコを同じ角度で置くので、向きが変わることはありません。

 これはデンソーウェーブ側の話ですが、人間のようにハンコを朱肉に押し付けたり、紙にハンコがきれいに押せるように満遍なく圧力をかけたりするような動作をロボットで再現するのが難しかったと聞いています。

見積書や契約書は冊子になっている場合もある。ページめくりと押印の合わせ技はできない?

 まだ検証していませんが、ゆくゆくは実現したいと考えています。