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1分解説
  • ・日立キャピタルなど3社が契約書に自動で押印するロボットを開発。2020年3月からサービスを開始する。
  • ・冊子を丸ごとスキャンする機能も備え、今後、他の機能も追加する予定。価格は未定だが、月額数十万円となる見込みだ。
  • ・「チェックなしの押印を助長するのでは」との指摘に、日立キャピタルは「そんな意図はなく、単純作業を減らすのが目的だ」と回答。

 日立キャピタル、デンソーウェーブ、日立システムズの3社は、契約書などに自動で押印するロボットを開発し、12月18日から始まった国際ロボット展で初めて公開した。月額料金のリース契約で、2020年3月からサービス提供を予定している。開発の経緯や技術的な課題など、開発担当者にその真意を聞いた。

 まずは下の動画を見てほしい。実際にロボットが契約書にハンコを押す様子を撮影したものだ。

国際ロボット展で日立キャピタルなどが公開したロボット。ハンコを押すまでの一連の流れを撮影した

 この押印ロボットは、デンソーウェーブが開発したロボット「COBOTTA」を2台使用し、カメラやジグなどを追加で取り付けて改良したもの。ロボットがハンコを押すプロセスは以下通りだ。

 まず、ハンコを押したい書類を事前にスキャンし、押印の位置やハンコの種類を登録する。事前登録さえすれば複数種類の書類がランダムに混ざっていても、ロボットが自動で判別して決められた位置に押印できる。

 登録後、押印したい書類をストッカーと呼ばれる箱に入れ、PC上で「承認」を押す。すると、書類をスキャンして、登録したどのタイプの書類なのかを判別。ロボットの「手」に当たるアタッチメントをハンコに持ち替え、朱肉につけて決められた位置にハンコを押す。その後、またアタッチメントを持ち替えて、2本のアームを使って押印した書類を横に移動させ、次の書類に進むーー。

 動画をよく見ると、朱肉を付ける際とハンコを押す際に、小刻みにアームが震えていることが分かる。人間が押印する時の、ハンコを押し付けるような動作を再現することで、かすれずに押印することが可能になった。

人間がハンコを押し付けるような動作を再現している

 国際ロボット展開催直前に記者が取材すると、現場は「実演」の最終調整に入っていた。エンジニアが、アタッチメントの持ち替えやハンコの位置などを、コンマ数ミリの精度で調整する。押印ロボットにもまた、日本製造業のお家芸とも言われる「すり合わせ」の技術が生かされていた。

 1枚に押印する時間は現状では1分弱。日立キャピタルはサービスリリースの2020年3月までロボットの改良を続け、時間の短縮を図る考えだ。

2台のCOBOTTAと卓上カメラ、スライダーなどの装置で構成される
ロボットが押印した書類。下には柔らかいマットが敷かれ、きれいにハンコが押せる

 3社が開発したロボットは、押印の他に、冊子を2本のアームでめくり、全ページをスキャンする機能も持ち合わせる。2本のアームで書類をめくり、卓上カメラを使ってデータを取り込む。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と連携して、冊子表紙にある文書名をファイル名として登録し、ファイル名に応じてフォルダ別にして保存することも可能だ。

 現状では、10ページの冊子なら、スキャンから保存まで4分程度で完了する。日立キャピタルは60ページまでなら問題なく動作することを確認しており、サービスリリースまでに上限ページ数をさらに伸ばすとしている。

 サービスは月額制で、日立キャピタルが提供する。月額料金は数十万円程度になる見込み。同社は、単独のサービスに加えて、コンサルティング会社などと組んで、オフィス向けソリューションサービスの一つとして提供していく予定だ。

 開発の経緯や技術的な課題、押印をターゲットにした理由は--。企画者である日立キャピタルの斎藤裕之・営業統括本部アカウント事業本部長、北村威・アカウント事業本部新規事業チーム担当課長、芝崎理人・アカウント事業本部新規事業チームのインタビューを掲載する。