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立ち乗りの電動二輪車に乗った社員が自由に往来する

 通路をセグウェイ型の立ち乗り二輪車がかけ回り、アーム型ロボットがゴミを分別、社員が芝生のようなスペースで寝転がる──。ITスタートアップ企業のオフィスかと見間違いそうになるこの場所は、トヨタ自動車がデンソー、アイシン精機と共に設立したソフトウエア開発新会社、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)の新オフィスだ。

TRI-ADのジェームス・カフナーCEO。グーグルの自走車開発チームの創設メンバーとして携わった経歴を持つ。

 人材獲得競争の激しいソフトウエア分野では、「競争力の高い世界のトップタレントを集めるために素晴らしい環境が必要になる」(TRI-ADのジェームス・カフナーCEO=最高経営責任者)。そのため、各社のお膝元である愛知県の三河地区でもなく名古屋でもない、東京・日本橋に新たなオフィスを設けた。

 TRI-ADは2018年3月の設立。自動運転に関するソフトウエアを開発する専門部隊が、今年7月に日本橋室町三井タワーに移転してきた。16階から20階まで延べ2万1500㎡という広さのオフィスで、国内外から集まった1200人が働く予定だ。

 オフィスを見渡すと、畳敷きのミーティングスペースに窓際のハンモック、ハニカム構造に組み合わされたデスクなど、都内一等地にあるとは思えないほどゆとりを持って空間が使われている。「ストリート」と呼ばれる通路の幅は自動車が通れるほど広く、電動のパーソナルモビリティーに乗った社員が余裕ですれ違うことができる。

畳や芝生風マットの敷かれたスペースでは横になってくつろぐことができる

 この新しい開発拠点についてカフナーCEOは「世界で最も知られているトヨタ生産方式をソフトウエア開発で実現しようとしている」と話す。ただ、生産現場で徹底的に無駄を省く「カイゼン」のイメージとは対照的に、新オフィスは「ムダ」と言える部分が多いように見える。

 TRI-ADで働くのはソフトウエア開発に携わるエンジニアたち。新規採用者約90人のうち半数以上が外国人材だ。国内外から優秀な人材を呼び寄せるには、「ここで働きたい」と思わせる魅力的なオフィスであることが重要になる。IT業界ではSansanやLINEなどのように、外国人に人気のある京都にサテライトオフィスを設置する動きも広がっている。

 また、ハニカム構造のレイアウトなどコミュニケーションが生まれすい空間設計や、ハンモックや畳といったリラックススペースは、創造的なアイデアが生まれる場として、最近のオフィスで積極的に導入されているトレンドだ。

ハニカム構造のレイアウトは、周囲の社員とコミュニケーションが取りやすくなるという

 ハードウエア以上に開発のスピードが求められるソフト開発では、これまでとは異なる視点で生産性向上に取り組む必要がある。ほかにも、社員が新しい開発技術をキャッチアップしたり、外国語でのコミュニケーションを円滑に進めたりできるように、「道場(DOJO)」という社内教育の場も設けたという。

 トヨタは2020年に高速道路上での合流・レーンチェンジ・分流も含めた自動運転技術「Highway Teammate(ハイウェイチームメイト)」の実用化を目指す。20年夏には東京・お台場でレベル4相当の自動運転の試運転も予定する。ムダだらけに見える新オフィスは、こうした先進技術開発を実現させる一番のカイゼンとなるかもしれない。

■変更履歴
掲載当初、「現在働いている約650人のうち半数以上が外国人材だ」としていましたが、「新規採用者約90人のうち半数以上が外国人材だ」の誤りでした。本文は修正済みです。 [2020/01/06 12:15]
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