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(写真:PIXTA)

 年末の恒例行事、忘年会。職場の忘年会に参加しない「忘年会スルー」がネット上で話題だ。きっかけはNHKのニュースで取り上げられた、ある女性社員のインタビュー。「自分で4000~5000円払って上司の話を聞くのはハードルが高い」という回答に、共感や反論の声が集まっている。

  • ・「2次会が毎年スナックと決まっているため参加しない。友人など別のコミュニティーの忘年会をハシゴする」(京都府・建築施工会社・20代・男性)
  • ・「1次会は会社からお金が出るので行くべきだとも思ったが、毎回2次会、3次会と深夜まで連れ回されるため今年は行かない」(東京都・コンサルティング会社・20代・男性)

 上司とスナックで同席する、2次会・3次会に強制的に連れていかれるなど、「しんどい飲み会」に参加した経験を持つ人々の共感がSNS上で広がったのが、今回の「忘年会スルー」ブームの正体だ。

 ただ、今年に限って特別に忘年会スルーが増えているかといえば、そうでもない。ホットペッパーグルメ外食総研の調査によると、首都圏・関西圏・東海圏の今年の忘年会・新年会の参加予定回数は「昨年と変わらない」が78.9%とほぼ例年並みを見込んでいるという。飲食店に出荷する樽生のビール出荷量は、「前年と比べて大きな影響は見られない」(サントリー)。

 近年、「飲みニケーション」に否定的と言われることも多い若手社員。一方で、意外にも会社の飲み会に参加したいという声もある。

  • ・「社内の飲み会自体が1年に1回しかないので、参加してもいいかなと思う」(東京都・建築設計会社・20代・男性)
  • ・「会社負担の自由参加。職場の人と気が合うので参加したい」(神奈川県・製造ベンチャー・20代・男性)
  • ・「積立金で参加費が負担され、不参加の場合は返金される。今年は参加したが、直属で仲の良い上司が不参加だったので若干モチベーションは低かった」(福井県・楽器製造会社・20代・男性)

 酒の席の大前提である「気の合う仲間と飲めるか」さえクリアできていれば、プライベートでも会社でも楽しい飲み会は成立するようだ。ただ、お酒文化そのものは確実に変化してきている。国税庁が発表した酒レポートによると、成人1人当たりの酒類消費数量は、平成4年度の年間101.8リットルをピークに、平成29年度には年間80.5リットルまで減少。年間の飲酒量はピーク時の8割程度まで落ち込んだ。ビール大手5社の出荷量も、05年から14年連続で減少を続けている。

 また、お酒を提供する飲食店も厳しい環境にある。帝国データバンクによると、2018年には飲食店の倒産と休廃業・解散の件数が過去最多に上った。その中でも最も多かったのが「酒場・ビヤホール」で、過去11年連続で倒産件数が最多だ。

 以前と比べて、お酒文化自体が縮小傾向にあることは間違いない。飲めない人や飲まない人も増える中、忘年会のトレンドは少し変わってきている。例えば、従来は2時間の宴会コースがスタンダードだったが「今年は90分間の短めのコースの予約が増えている」(サッポロライオン)。深夜まで続くハシゴ酒のリスクを回避するため、短く宴会を切り上げる方法は、他にもある。

  • ・「新入社員なので幹事を任された。ケータリングでサクッと済ませようと思う」(東京都・コンサルティング・20代・女性)
  • ・「社内に子持ちの女性も多いため、子連れ参加可の昼開催になった」(東京都・ITベンチャー・20代・女性)

 ケータリングを注文して社内で開催したり、業務時間中の昼間に開催したりなど、多様なライフスタイルに合わせた忘年会も増えている。

 上司の顔色をうかがって嫌々参加する飲み会は不幸でしかない一方、お酒文化の衰退は経済にも打撃を与えかねない。「忘年会スルー」という選択肢に加え、自由で楽しい忘年会が増えることも期待したい。

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