全1985文字

 HOYAが東芝に待ったをかけた。東芝の子会社、ニューフレアテクノロジーに対して来春にTOB(株式公開買い付け)を実施すると12月13日に発表。だが、ニューフレアに対しては東芝が完全子会社化を目指して12月25日を期限にTOBを実施しており、ニューフレア争奪戦が勃発した形だ。ここでカギを握るのは東芝に次ぐ2位株主の東芝機械。HOYAの買収の成否はまずは東芝機械に委ねられている。

11月13日、ニューフレアテクノロジーを含む上場3社の親子上場解消を発表していた東芝の車谷暢昭会長(写真:共同通信)

 HOYAはニューフレア株を1株1万2900円で買い付ける。全株取得を目指しており、その場合の買収総額は1477億円になる見通し。一方、ニューフレアの完全子会社化を目指す東芝のTOB価格は1株1万1900円。HOYAは東芝のTOB価格に1000円上乗せした格好になる。

 東芝はTOBの成立条件として所有割合の14.27%を下限に設定している。既に保有する52.4%から14.27%を買い増せば東芝の保有株が3分の2を超える。ニューフレアの2位株主の東芝機械の所有割合は15.80%。つまり東芝機械が東芝のTOBに応じた時点でTOBは成立し、その後は株式売り渡し請求や株式併合などの手段でニューフレアは東芝の完全子会社になり上場廃止となってしまう。

 一方、HOYAのTOBは2020年4月開始予定。クリスマスが期限の東芝によるTOBが成立すれば、HOYAは「不戦敗」となり、HOYAのところにサンタクロースはやってこない。東芝は東芝機械に対してTOBに応じるよう求めている。

 ちなみに17年3月に東芝は保有していた約2割の東芝機械株の大部分を手放しており、東芝機械は東芝グループから離脱した。20年4月には社名も「芝浦機械」に変更する予定だ。そんな東芝機械がニューフレア争奪戦のキャスチングボートを握ったことになる。

 では東芝機械はどうするのか。常識的に考えれば、1000円高いHOYAのTOBに応じた方が東芝機械の利益は多いはずで、東芝機械の株主はHOYAに売ってほしい、となるだろう。

 その東芝機械の筆頭株主は、村上世彰氏が事実上率いるファンド、オフィスサポート(共同保有分を含め、11月29日時点で9.19%を保有)だ。村上氏率いる別のファンドはニューフレアの大株主でもある。

 12月13日に日経ビジネスの取材に応じた村上氏は「HOYAの発表には驚いた」としつつ、「東芝機械は東芝機械の株主価値を最大にするため、きちんと東芝やHOYAと交渉するだろう。単に今のまま東芝のTOBに応じるなんてことはしないはずだ」とコメントした。

 今回の一連の東芝案件に関わっているある証券会社幹部も「このまま東芝機械が価格が低い方の東芝のTOBに応じたら、東芝機械自身が株主代表訴訟を起こされるリスクがある」と指摘する。HOYAの行動により、東芝機械が東芝のTOBに応じにくくなったのは動かしがたい事実だ。