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 経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は12月12日、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメント系ファンド、いちごトラストから金融支援を受けることで基本合意したと発表した。支援金額は800億~900億円になる見通し。記者会見に登壇したJDIの菊岡稔社長兼CEO(最高経営責任者)は、「会社の財務の健全性のために心強いバックアップをいただいた」と語った。

会見に登壇したジャパンディスプレイの菊岡稔社長兼CEO

 12月12日に基本合意書を交わし、詳細は今後詰める。これまでの支援枠組みを主導してきた企業連合「Suwaインベストメントホールディングス」からの出資が12月31日までに実施されなかった場合、いちごアセットグループと2020年1月中に最終契約を締結し、同年2~3月に資金調達を完了することを目指す。

 公表済みの他の事業会社からの金融支援も受ける計画。米アップルとみられる顧客から2億ドル、海外の取引先から5000万ドルを調達する予定だ。

 JDIは9月末時点で1000億円を超える債務超過に陥っており、資金調達は待ったなしの状態だ。海外企業との資本提携を表明したのは17年夏だが、今年4月に発表した金融支援の枠組みは二転三転。9月末までに3社が離脱を通知していた。紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、ようやく支援の枠組みは固まりつつあるといえる。

 資金調達にメドが立ちつつあるとはいえ、JDIが抱える課題は他にもある。巨額資金を着服したとして懲戒解雇された元幹部からの通知を受けて、12月2日には不適切な会計処理の有無を調べる特別調査委員会を立ち上げた。発表後、初となる公の場に現れた菊岡社長は、「第3者に調査を委ねており、膿(うみ)があるのであれば出し切る」と語った。

 JDIはこの2年間で公表された企業以外にも、中国パネルメーカー大手などとの交渉を進めてきた。最終的にJDIの資本提携を引き受けることになりそうな、いちごアセットとはどんな会社なのか。

 いちごアセットは06年5月に設立。社名にある「いちご」は、千利休が説いた茶人の心構え「 一期一会(いちごいちえ)」に由来。「人との出会いを大切に」という精神を企業理念にしている。金融庁の電子開示システム「EDINET」に開示された大量保有報告書によれば、ユニゾホールディングス、長谷工コーポレーション、富士通、日本製紙などの株式を保有している。

 経営トップを務めるのは、スコット・キャロン氏。幼少時に数年日本で過ごし、米プリンストン大学卒業後も日本語の学習を続け、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)客員研究員やモルガン・スタンレー証券の株式統括本部長を務めた。日本通として知られ、06年に日本の永住権を取得している。17~18年には投資情報紙の日経ヴェリタスで「スコット・キャロンのニッポン応援団」という名のコラムを連載していた。

 キャロン社長の投資スタンスは長期保有が原則だ。かつて日経ビジネスのインタビューに対して「同じ会社に20年も30年も勤めてその会社のことを一番分かっている経営者に対して、株主だからといって突然現れていろいろと言うのは失礼だし、投資のスタンスとしても間違っている。経営者の話にじっくりと耳を傾け、長い間おつき合いする『モノを聞く株主』でありたい」と話していた。JDIの菊岡社長も「長期保有を前提としており、熱心なサポートが期待できる」と話す。

 肝心のいちごアセット側は 会見には登壇しなかったため、今回のJDI救済の真の狙いは図りにくい。ただ、投資スタンスを額面通りに受け取れば、有益なパートナーと言えそうだ。

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