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 アステラス製薬は12月10日、R&D(研究開発)説明会を開いた。テーマとして取り上げたのは、がん免疫分野。関連する5つの製品が初期臨床試験の段階に進んできたことを明らかにし、がん免疫分野での存在感をアピールした。

説明するアステラス製薬の安川健司社長

 がん免疫分野の治療薬とは、「免疫チェックポイント阻害剤」や「キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法」に代表される抗がん剤を指す。

 免疫チェックポイント阻害剤はがん細胞が持つ、生体の免疫反応から逃れる機構を妨げて、免疫細胞にがん細胞を攻撃させてがんを治療するもので、小野薬品工業の「オプジーボ」や、米メルクの「キイトルーダ」などが代表例だ。

 一方、CAR-T療法は、ヒトの免疫反応の中心的な役割を担うT細胞に対して遺伝子組み換え技術を施し、特定のがん細胞への攻撃力を高めるもので、ノバルティス(スイス)の「キムリア」が代表例となる。

 この他にも幾つかのタイプの薬があるが、共通点は生体の免疫反応を利用してがんを攻撃しようと狙っている点だ。個々のがんが持つ遺伝子変異をターゲットに治療を狙う分子標的薬と違って、様々な種類のがんに対して幅広く効く可能性があると考えられている。

 がんを免疫で攻撃するアイデアは古くからあったが、有効な医薬品を作り出すのは簡単ではなかった。

 免疫の仕組みの解明が進む一方、2010年代に入って免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験の結果が報告されるようになり、がん免疫が急速に注目されるようになった。小野薬品工業と提携してオプジーボの開発を進めていた米ブリストル・マイヤーズスクイブや、キイトルーダの開発を進めていた米メルクの後を追う形で、スイスのロシュや英アストラゼネカ、米ファイザーなどのグローバル大手がチェックポイント阻害剤の開発に続々と参入した。

 CAR-T療法でも、ノバルティスの後を追って、米ギリアドや米セルジーン(19年にブリストルが買収)、ファイザー、武田薬品工業、大塚製薬などが乗り出した。この結果、がん免疫分野は極めて激しい競争状態となっている。

 一方、アステラスは15年に米ベンチャーのポテンザと共同研究を開始したところからがん免疫の研究に着手。18年に鳥取大学から、がん細胞内でのみ増殖する性質のウイルスを用いてがんを攻撃する腫瘍溶解性ウイルスASP9801の開発権を獲得。同年ポテンザの買収を通じて新しいタイプの免疫チェックポイント阻害剤であるASP8374をはじめ、T細胞の増強などに関わる3つの抗体医薬を手に入れた。さらに今年に入って理化学研究所から免疫増強用の細胞医薬であるASP7517の権利を導入。この5製品が既に初期臨床試験の段階にあり、続いて動物実験の段階にも幾つかの候補品を取りそろえていることを紹介した。いずれも外部との連携で確保したものだ。