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 アパレル大手オンワードホールディングス(HD)は12月6日、約350人の希望退職を募ると発表した。対象となるのは主要子会社オンワード樫山を中心とした40歳以上、勤続3年以上の社員(販売職除く)の約1300人。計画通りであれば対象者の4分の1強が早期退職することになる。2020年1月中に募集し、退職者には特別退職金を加算。再就職支援も実施する計画だ。

東京都中央区日本橋にあるオンワードホールディングス本社
 

 オンワードHDは全国の百貨店を中心に「23区」や「組曲」など有名ブランドを展開してきたが、百貨店の衣料品の売り上げ減少に伴って業績が悪化している。保元道宣社長は今年10月に不採算店舗の閉鎖や一部ブランドの廃止を発表。成長しているネット通販事業やオーダースーツ事業に注力する方針を掲げた。具体的な閉鎖店舗数は明らかにしていないが、日本経済新聞などは国内外約3000店舗のうち2割の約600店を閉めると報じている。

 保元社長は「地方(の百貨店)に客が全くいなくなったわけではない。しかし総論で言えば、今までのビジネスを続けるのは難しい」と話す。20年2月期の連結業績は、営業利益が前の期比73%減の12億円、当期純利益は240億円の赤字となる見込み。現在の中期経営計画が終わる22年2月期までに構造改革にめどをつけ、営業利益を100億円まで押し上げることを目標としている。

参考記事:オンワードが11年ぶりの大規模特損、EC強化は「間に合う」か

 今回の希望退職の対象には百貨店への営業職や商品の企画職も含まれる。店舗閉鎖やブランド廃止が続けば、そうした人材の余剰感は自然と高まることになる。その一方で、基本的に販売職限定で採用している店舗の販売員は、希望退職の対象とはなっていない。「店舗の現場はビジネスの最前線であるだけでなく、販売員の人材確保が難しくなっているからだ」(オンワードHD広報)。

 一般社員の削減を進める一方で現場の人手不足に苦慮するという構造は同社だけのものではない。三陽商会は13年、16年、18年に計800人近い早期退職を実施しているが、店舗では逆に販売員の確保のため待遇を手厚くしている。18年には売り場の販売員約800人を契約社員から正社員に切り替えた。

 百貨店などに商品を卸してきた大手メーカーの業績が悪化する一方で、SPA(製造小売り)やセレクトショップの業績は比較的堅調だ。こうした自社店舗型のアパレルの強みとして、売り場での販売力や店舗でつかんだ顧客ニーズを品ぞろえや商品企画に反映する現場主義の体制が挙げられる。業界全体でネット通販のシェアは拡大を続けるものの1割程度で、依然として販売員の質は店舗を持つアパレルの競争力を左右する主要因の1つだ。

 次なる成長事業を模索するアパレルメーカー各社はネット通販などデジタル分野への投資を加速しているが、その足元では売り場人材の確保競争も過熱しつつある。各社は本社機能のスリム化と現場の強化を同時に実現する難題を突きつけられている。

  
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