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 アウトドア衣料ブランド「ザ・ノース・フェイス」などを展開するゴールドウインは11月22日、建て替えオープンした渋谷の商業施設「渋谷パルコ」内に新型店舗「ザ・ノース・フェイス・ラボ」を開店した。同店の目玉は、アウトドアウエアのサイズや色を客の好みにカスタマイズし注文できるサービス「141 CUSTOMS(ワンフォーワンカスタムズ)」だ。

ゴールドウインが渋谷パルコ内にオープンした「ザ・ノース・フェイス ラボ」の店内

 店内の採寸スペースに3次元計測技術を導入。客が専用のスーツに着替えて採寸スペースに入ると、商品のカスタマイズに用いるアバター(3次元モデル)に体の各部分の寸法が反映される。

「ザ・ノース・フェイス ラボ」では3次元の採寸技術を導入し、客の体形をモデル化した上で商品をカスタマイズする

 客と店員はアバターが商品を着用した状態をモニター上で確認しながら、袖の長さや各部の色、裏地やボタンの種類などを細かく調整できる。完成したデータは富山県小矢部市にあるゴールドウインの研究開発拠点「ゴールドウイン テクニカルセンター」に送られ、現地の職人が1着ずつ商品に仕上げるという。

 価格は比較的安価なジャケットで3万円前後で、高価なものは9万円前後だという。いずれも登山など本格的なアウトドア活動をする人に向けた商品だ。

 「防寒目的であれば、体にしっかりフィットして隙間ができない方が効果は高くなる。また、重ね着する人の場合はジャケットにある程度余裕を持たせた方がいい。そうした用途の違いに応じてカスタマイズできるのが利点だ」(ゴールドウイン広報担当者)

 衣料品のオーダーメード自体は決して新しい動きではないが、近年はITを取り入れて効率を上げた「マスカスタマイゼーション」が拡大しつつある。2017年以降オンワードホールディングスやZOZOがウェブサイトを介して注文できるオーダースーツブランドを開始。ZOZOはスマホを使った3次元計測技術で話題を呼んだ。

 今年はワールドや伊藤忠商事が、スマホやタブレットを使った採寸技術を開発する企業と提携した。繊維メーカーのセーレンは自社ブランドで、モニター上での「バーチャル試着」を取り入れたドレスなどのオーダーメードを手がける。ゴールドウインの新サービスにより、そうした動きがアウトドアウエアにまで広がることになる。

 マスカスタマイゼーションを目指す取り組みの背景には、無駄な商品を製造・流通させずに顧客ニーズに対応したいというアパレル業界共通の問題意識がある。近年は環境負荷の観点から、衣料品の大量廃棄に消費者の厳しい目が注がれるようになった。また、余剰在庫の値下げ販売は粗利率を押し下げ、ブランドイメージも傷つけかねない。

 同様の課題に対して別の方法で取り組むのが「ユニクロ」のファーストリテイリングだ。「(自社ブランドは)マスカスタマイゼーションにはならない。客の欲しいものを即時に渡すことができないからだ」。同社の柳井正会長兼社長は11月13日の会見でそう断言した。同日、同社は倉庫自動化技術を開発するMUJIN(東京・江東)などとの協業を発表。需要予測に応じて店舗ごとの商品構成を柔軟に変え、無駄な商品を製造・輸送することなく客のニーズに対応する「流通改革」をさらに推し進める方針を強調した。

 マスカスタマイゼーションは大量生産と受注生産を両立する「究極のものづくり」と考えられてきた。市場が成熟し、大量生産に伴う無駄がより大きな問題となったアパレル業界で、オーダーが拡大するのは自然な流れといえる。しかし、あくまで店頭に商品を並べて客のニーズに応えようとするファーストリテイリングの方針が示唆するように、従来の大量生産で成長してきたアパレル各社が規模を維持したままマスカスタマイゼーションに移行するのは容易ではない。業界の未来をどの方向に見いだすか、戦略が分かれ始めた。

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