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 「コア技術を成長させながら、上に載せる技術を組み合わせていくことで新たな価値を提供していく」。経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)でCTO(最高技術責任者)を務める仲島義晴執行役員は12月5日、千葉市の幕張メッセで開催中の見本市「液晶・有機EL・センサ 技術展(ファインテックジャパン)」の基調講演で、同社の技術戦略の方向性をこう語った。

ジャパンディスプレイでCTO(最高技術責任者)を務める仲島義晴執行役員

 2019年3月期に5期連続で最終赤字に陥ったJDI。19年4~9月期も最終損益が1086億円の赤字と厳しい経営状況が続く。赤字の原因となっているのが、スマートフォン用液晶パネル事業への過度な依存だ。米アップルを主要取引先にしているとはいえ、スマホ市場の成長率が鈍る中、状況は厳しい。再建へ向けて仲島CTOが目指す開発の方向性は「脱スマホ」が色濃く表れたものだった。

 仲島CTOがJDIのコア技術に挙げるのが「LTPS」だ。低温多結晶シリコン(Low Temperature Polycrystalline Silicon)の略で、ガラス基板上に薄膜上の駆動回路を形成することができる。JDIではこのLTPSを使った駆動回路の上に、液晶素子を組み合わせることで、スマホ向けを中心に「高精細で狭額縁のディスプレーを実現してきた」(仲島CTO)。

 JDIではLTPSの上に載せる技術を液晶から有機EL、そしてセンサー素子に変えていくことで、冒頭の発言の通り、新たな価値を提供していく考えだ。LTPS技術についてもこれまでのガラス基板から「ストレッチャブル(伸縮可能なフィルムなど)基板に変えていく」(仲島CTO)。これにより「ストレッチャブルな生体センサーなどを実現していく」と続ける。

JDIの展示ブースの様子

 実際、見本市会場のJDIブースには新たな価値提供を目指した試作品が数多く並んだ。

 例えば、見本市に先立ち11月28日に発表した1.6インチの「マイクロLED」だ。LTPSを使った駆動回路の上に、赤・緑・青の微細なLEDを並べてディスプレーとして表示する技術。液晶や有機ELに比べて高輝度や高視野角といった利点があり、次世代ディスプレーの有力候補とされる。JDIの開発品では、明るさが1㎡当たり3000カンデラと、一般的なディスプレーの5倍以上に高めた。この特性を生かし、車載分野などでの実用化を目指している。

JDIが開発した「マイクロLED」

 センサー関連では画面に触れずに操作できる「ホバー」機能を備えた液晶ディスプレーを展示した。タッチセンサーの機能をディスプレーを一体化する技術を応用。「指であれば5cm、手のひらであれば10cm弱の距離でも操作できる」(JDI)という。医療現場など直接画面に触れられない現場での用途を開拓する考えだ。

JDIが開発した「ホバー」機能を備えた液晶ディスプレー

 展示ブースには他にもVR(仮想現実)機器向けの小型・高精細液晶やフレキシブルな指紋センサーなども並んだ。「今後は高い成長率のある領域で技術開発を展開していきたい」と仲島CTOは意気込む。

 足元の業績不振に加え、海外企業との金融支援交渉も決着しないJDI。巨額資金を着服したとして懲戒解雇された元幹部からの通知を受けて、不適切な会計処理の有無を調べる特別調査委員会を立ち上げるなど、経営再建への課題は山積している。そんな中でも開発現場は技術開発を急いでいる。現場の士気をこれ以上低下させないためにも経営陣には課題を着実に解決していく必要があるだろう。

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