福島県会津若松市がIT(情報技術)を駆使して効率的な行政サービスを提供する「スマートシティ」の実現に向け、新たな取り組みを始める。アクセンチュアが中心となって、スマートシティの基盤となる「都市OS」の共通機能を強化する。また、住民の購買情報やヘルスケアデータなどを一元管理するなどして、行政サービスの高度化につなげる実証研究に乗り出す。

新たな実証研究をスタートさせる4社の担当者と会津若松市の室井照平市長(写真右から3番目)

 実証研究にはアクセンチュアのほか、システム開発のTIS、KDDIとアクセンチュアの共同出資会社でデータ分析を手掛けるアライズアナリティクス(東京・渋谷)、自治体向けIT支援のアスコエパートナーズ(東京・港)が加わる。

 アクセンチュアが担当するのは、パソコンの基本ソフトに相当する「都市OS」だ。全国各地でスマートシティ構想が練られているが、それを支えるシステムはまちまちで開発効率の悪さが指摘される。アクセンチュアは会津若松で行政サービスのIT化の基盤となるような「都市OS」の共通機能を強化、全国の自治体に提供することを目指す。実現すれば、各都市のスマートシティ化が進みやすくなるとの期待がある。

 都市OSの上で動くアプリケーションソフトに対応するサービスも追加する。TISはスマホ決済のオリガミ(東京・港)と連携して、市民のクレジットカードや電子マネーなどを一元管理する「会津ウォレット(財布)」を開発。住民IDとひもづけすることで、市民の購買情報をまとめて管理できるようにする。

 アライズアナリティクスは名古屋大学医学部発の医療ベンチャー、PREVENTの協力を得て、市民の健診結果の見える化や生活習慣病のリスク分析などを手掛ける。アスコエパートナーズは、行政手続きを簡素化する実証研究を行う。

 会津若松はスマートシティ化で先行している自治体の1つとされる。2011年の東日本大震災で打撃を受けた地元経済の再建に向け、取り組んできた経緯がある。

今年4月に開設した「ICTオフィスビル」にはアクセンチュアやNEC、三菱商事など21社が入居を決定。スマートシティプロジェクトへの企業の期待も高まる

 例えば、市のポータルサイトとなる「会津若松+(プラス)」では、市民が年齢や性別、家族構成などを入力すれば、個人に合わせた行政サービスの情報を提供できるようにしている。子供のいる家庭には予防接種の案内や保育所の入所案内などを優先的に表示するといった具合だ。

 自治体の壁を越えて観光情報を発信する取り組みで外国人観光客も大きく増えた。会津若松市を中心に周辺の7市町村が連携し、旅の計画から現地での体験、帰路までをサポートする情報を全世界に発信。18年の会津若松市の外国人宿泊客はプロジェクト開始前の15年と比べて約5.3倍の年約1万8000人に増えた。

 
 こうした実績を踏まえながら、これから取り組むのが、決済や健康などより秘匿性の高い市民の情報を生かした行政サービス作りといえる。どう個人を認証し、電子マネーの利用データや健康診断で得た健康データを管理していくか。さらに、そうしたデータをどう行政に役立てていくか。市民を巻き込みながらの壮大な社会実験(研究)が本格化する。

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