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scopesイベントの様子はウェブで生配信される
  

 日本国内では2020年後半に販売開始を予定している独ポルシェ初のEV(電気自動車)「タイカン」。2.8秒で時速100kmに到達する次世代のスーパーカーで、航続距離は最長で463kmに達する。現時点で価格は明らかでないものの、およそ1000万円は下らないとみられる。それでも日本法人ポルシェジャパン(東京・港)のミヒャエル・キルシュ社長は「ターゲットは次世代のリーダーとなるミレニアル層や野心的・創造的な若者、上昇志向のビジネスウーマンだ」と言い切る。

 11月28日の夜、東京・表参道のギャラリーでは40名ほどの若者がトークセッションに耳を傾けていた。「16年の風営法改正でクラブシーンはどう変わったか」「東京のナイトエコノミーはどうすれば面白くなるか」──。DJやWEBメディアの代表などが登壇したこのイベントは、ポルシェジャパンが企画した「SCOPES TOKYO(スコープストウキョウ)」だ。

 16日間にわたって開催される同イベントではタイカンの実車が公開される。それに合わせ、アート、ミュージック、ファッションなどに関するトークイベントやパーティーを開催。来場者の多くは20~30代。SNSでイベントについて知ることが多いという。

 このイベントの狙いは、参加者にすぐにタイカンを購入してもらうというものではなく、将来的にコアとなりうるターゲット層と接点を持つことにある。一般的に20~30代のミレニアル世代はモノを所有する欲求が薄いとされる一方、自分が興味を持つ分野には時間やお金を使う傾向にあるとされる。

 抜群のブランド力を持つポルシェといえども、従来型のアプローチだけではそれらの層に響かない可能性がある。イベントでは「バーチャルな人格はリアルに愛されるか」「日本のアートは変われるか」など車とは直接関係ないテーマを扱うことで、潜在的なユーザー層との接点を持とうと試みている。

光を使ったインスタレーション作品とコラボして展示されるタイカン
 

車の買い方にも変化が

 タイカンでは事前予約のウェブサイトを設置しており、予約金30万円を支払うと優先購入できる。国内では試乗もできない段階にもかかわらず、「既に100件を超える申し込みがある。その7~8割がこれまでポルシェを購入したことのない人」(ポルシェジャパン)という。

 従来とは違う売り方を模索する動きは海外メーカーを中心に広がっている。EV市場開拓で先行する米テスラが21年に生産を始める同社初のピックアップトラック型EVは、発表から5日間で予約台数が25万台に達したとみられる。テスラはディーラーを持たず、ウェブ上でクリックするだけで車を購入できるスタイルを確立。イーロン・マスクCEO(最高経営責任者)がEV普及の社会的意義を重要視するメッセージを発信し続けることで若い消費者層をつかんできた。独BMWやスウェーデンのボルボも「サブスク(定額課金)」サービスを用意して消費行動の多様化に対応し始めている。

 顧客との新たな関係性が求められるようになったことで、ディーラーの役割も変わりつつある。それまで大きなウエートを占めていた「価格交渉」の相対的な価値が下がり、別の価値で足を運んでもらう必要があるからだ。

 各社が力を入れるのが販売店の「サービス化」だ。メルセデス・ベンツ日本(東京・品川)は車を売らないブランドスペース「メルセデス・ミー」を展開。六本木の好立地にあることから併設のカフェでくつろぐ人の姿も多くみられ、車を買わない顧客も呼び込んでいる。これから本格的に立ち上がるEV市場では、販売モデルをどう変えていくかも自動車各社の課題になるだろう。

  
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