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味の素はアミノインデックスの技術を生かして、がん治療の効き目を事前に調べる研究を始める

 味の素は、食品事業で培ったアミノ酸のノウハウをもとに、がん治療の効果を事前に予測する検査の開発を始める。

 11月12日に神奈川県立がんセンターと研究開発契約を結んだ。人の血液中のアミノ酸濃度を分析することで、がん治療が有効かどうかを予測する検査の実用化を目指す。同研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の委託事業に採択されている。

 がんの治療には複数の方法があるが、近年注目を集めるのが、2018年のノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授らが道を開拓した免疫療法だ。免疫細胞を活性化させてがん細胞を攻撃する。

 免疫療法は抗がん剤による治療などに比べて身体への負担が小さいとされるが、「効果がある人は2~3割程度と少ない」(味の素)。それにもかかわらず「治療費は年間1000万円程度」(同)と高額だ。効きやすい身体かどうかを、アミノ酸の濃度を分析することで事前に判断し、費用削減や身体への負担軽減を図る。23年度までに研究を終了し、実用化にめどをつけていく。

 同研究の土台になっているのは、味の素が11年に始めた、血中のアミノ酸濃度を分析することでがんの可能性を調べるサービス「アミノインデックス」だ。人間の体内にある20種類ほどのアミノ酸の濃度を分析することにより、1回の採血で5~6種のがんの可能性を同時に調べることができる。「肺がんの人の場合は、肺がんでない人に比べてアミノ酸Aとアミノ酸Bの濃度が高くなる」といったパターンを解析して、それぞれのがんの可能性を3段階で評価する。料金は医療機関によって異なるが、2万5000円程度。全国で約1500の医療機関が採用している。

 もともとは味の素の新規事業という位置づけで始まったアミノインデックス事業だが、今年4月の組織改編で事業部に格上げされた。アミノインデックスで培った、アミノ酸分析のノウハウや医療機関とのつながり、採取した血液を運ぶ物流網などは、他のサービスでも生かすことができることから、同社の期待は高い。森妹子・アミノインデックス事業部長は「将来的には、アミノインデックスの判定結果をもとに最適な食品も提供するなど、食品事業との相乗効果も狙っていきたい」と意気込む。

 だが、血液によるがん検査には競合も多い。島津製作所は18年、血液中の成分を分析することで高い確率で大腸がんを早期発見できる技術の検証試験を始めた。東芝は今年11月、血液中に約2500種類ある成分「マイクロRNA」を分析することで、13種類のがんを99%の精度で識別することに、研究開発レベルだが成功したと発表した。いずれも本格的な実用段階には至っていないが、実用化に成功すれば、味の素のサービスと競合することになる。医療機関以外の販路の開拓や、調べられる病気の拡大など、競合との違いを出すことが求められそうだ。

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