11月25日、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は東京ドームで大規模なミサを執り行った(写真:AP/アフロ)

 世界に約13億人の信者がいるローマ・カトリック教会のトップ、フランシスコ教皇が11月23日から3泊4日の日程で日本を訪れている。教皇の訪日は、精力的に各国を回り「空飛ぶ聖座」とも呼ばれたヨハネ・パウロ2世の1981年以来、38年ぶり。当時と同様に、強いカリスマ性を持った教皇の訪日に日本中が沸いている。

 「長崎爆心地における献花と雨の中で黙とうするお姿を見て、祈りとはこういうものなのだと心を打たれた」。カトリック信者の藤田野衣さんは訪日したフランシスコ教皇の姿に感銘を受けたという。13年前に挙げた結婚式を執り行ってもらうなど親しくしている神父が、フランシスコ教皇と同じアルゼンチン出身でフランシスコ教皇のまな弟子だという。東京ドームで開かれたミサには病気で参加がかなわなかったが、YouTubeでの生中継を見て「自分への気遣いを一番しなさいと言うお言葉が心に残った。疎外され孤独な人々を気にかける姿勢がマザーテレサと重なって見えた」と話す。

 気さくで親しみやすい印象が強いフランシスコ教皇だが、藤田さんがその神父から聞いたところによると、身内には非常に厳しいという。フランシスコ教皇は聖職者による性的虐待問題など教会の暗部にメスを入れる改革者として知られており、その覚悟をうかがわせる。

 被爆地の長崎と広島では核兵器廃絶とともに、国際連合の持続可能な開発目標(SDGs)の達成も強く訴えた。環境問題や社会の持続的な発展への問題意識の強さは、フランシスコという教皇の名からも推察される。

 本名はホルヘ・マリオ・ベルゴリオ。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに生まれ、2013年に南半球出身者で初の教皇となった。1549年に日本に初めてキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルゆかりのイエズス会出身で、本人も日本行きを願ったが健康上の理由で叶わなかった過去もある。

 

 教皇名の由来となった、アッシジの聖フランシスコは小鳥に説教した逸話で知られ、環境保護に携わる人の守護聖人とされている。今回の訪日でも羽田空港に到着するや、トヨタ自動車から寄贈された燃料電池車「MIRAI」に乗り換えた。

 長崎のスピーチでは、聴衆の多くがキリスト教徒ではないことを踏まえた上で、アッシジの聖フランシスコの平和の祈りを唱え、「私たち全員の祈りとなると確信している」と強調した。

 その祈りは博愛と寛容の精神を平易な言葉で表している。

主よ、わたしをあなたの平和の道具としてください。
憎しみがあるところに愛を、
いさかいがあるところにゆるしを、
疑いのあるところに信仰を、
絶望があるところに希望を、
闇に光を、
悲しみあるところに喜びをもたらすものとしてください。

 カトリックという言葉が意味するのは「普遍」。宗教や民族、国家を超えて、核兵器廃絶やSDGsの達成を訴える――。カトリックの精神を体現するフランシスコ教皇の姿に胸を打たれた人も多いのではないだろうか。

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