
日本と韓国の両政府が安全保障に関する情報を共有・保護するための日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を延長するか、失効するかの期限が11月23日午前0時に迫った。同協定を巡っては米国のマーク・エスパー国防長官が直前まで訪韓し、延長を強く求めるなどぎりぎりまでもつれている。22日午後3時時点で最終結論は出ていない。
GSOMIAとは日韓の防衛当局が相手側から提供された映像や文書、技術などの「秘密軍事情報」の保護を規定する協定。北朝鮮の核・ミサイルに関する情報などを扱うとされ、日韓の間で2016年11月に締結された。
失効となった場合の日本への影響については、専門家の間では「韓国側の情報は米国を通じてもほぼリアルタイムに得ることができるので、軽微だと考えられる」(小原凡司・笹川平和財団上席研究員)といった声が多い。
一方、韓国にとっては、「ミサイル発射直後の情報などは地理的に近く、正確に取れる」(ある元海上自衛隊幹部)が、最終的な弾着距離などは日本の情報を得て補正しないと正確には測りにくい。また、ミサイル防衛以外を見ると、日本は衛星を多数運用するほか、P3Cなどの洋上哨戒機を80機近く持ち、20機に満たない韓国より情報収集能力は優れているといわれる。
このため「例えば中国海軍の船舶や潜水艦などの行動情報については、日本の情報収集能力の方が高い」(小原上席研究員)ともいわれる。
だが、対北朝鮮だけでなく、中国やロシアなどから、日米韓の防衛協力にほころびが生じると受け取られかねない。
さらに日米韓の中核になる米国にしても「ドナルド・トランプ大統領は日韓GSOMIA問題に関心はない」(渡部恒雄・笹川平和財団上席研究員)といった見方も根強くある。トランプ大統領にとっては、北朝鮮の非核化に向けた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との米朝交渉で、来年に迫る自身の大統領選に向けた得点を稼ぐことの方が重要で、GSOMIAは二の次以下との見立てだ。エスパー国防長官らが韓国への説得に向かったのが土壇場になったのもその影響という。
いずれにせよGSOMIA問題で米韓関係は以前より冷え込んでいる。失効となった後、3カ国の防衛協力関係を再構築する推進力があるのか。韓国に比べ日本のマイナスは少ないように見えるが、北朝鮮に加え、連携を強化している中国とロシアの関係を見ると、時間をかけて次第に影響が出てきそうだ。
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