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 パナソニックの津賀一宏社長は11月22日、都内で記者会見し、2021年度までの中期経営計画の基本方針を説明した。既存事業に成長事業をかぶせるとした従来の中計の考え方を改め、「図式を変えた」と力説したものの、成長戦略は見えぬまま。中計の具体性に物足りなさが残った。

11月22日、都内で記者会見した津賀一宏社長

 パナソニックはこの日、都内で投資家向け説明会も開いた。19年5月に発表した中期経営計画の進捗と具体的な施策について、津賀社長や各事業部門のトップが説明したが、その説明会に先立つ形で津賀社長が記者会見した。

 もともと津賀社長は10月末の19年4~9月期決算の発表会で登壇する予定だったが、急きょ欠席。「中期経営計画について質問をされても、決算発表の短い時間の中では十分に説明できない」ことを理由にした(関連記事「パナソニック、津賀社長が決算説明会を急きょ欠席のなぜ」)こともあって、22日に改めて記者の取材に応じる場を設けた格好だ。

 津賀社長は会見の冒頭、「5月の中計はまったくの舌足らずだった」として、「本日のカンパニー長の説明で埋められるようにしたい」と投資家向け説明会を開く意義を説明した。

 中計では低収益体質からの脱却を目指すため、不採算事業からの撤退や他社との協業によって、収益力の向上を目指すことになっている。11月21日には液晶パネルの生産撤退を発表。津賀社長は「事業を持続可能な形にすることは、やってやれないことはないが、かなりの時間がかかる。困難だと見極めた」と説明した。

 12年に就任した津賀社長にとって改革を後戻りさせることはできない。就任当初、巨額赤字を招いたプラズマパネル事業を整理し、事業の柱を車載などBtoB(企業向け)に軸足を移したことで、業績も一定の回復ぶりをみせた。ただ、その効果も一段落。新しい成長の柱にしようとした電池や車載機器などの車載事業が伸び悩んだことが最大の誤算だろう。

 津賀社長もこう話す。「安定している既存事業に加え、車載事業を成長事業にかぶせようとした。しかし、それでは将来の絵が描けない」

 背景には、技術革新のスピードが速まり、社会構造そのものも大きく変化していることがある。例えば、クルマも「保有するモノ」から「共有(シェア)するモノ」へと変わりつつある。だからこそ「変化に応じて全体の考え方を変えていかなければならない」と津賀社長は言う。これまで安定的に稼いできた既存事業ですら、どんな変化の波が押し寄せるか分からない。成長すると期待する事業を立ち上げても、結局は社会の変化のスピードの方が速く、すぐに古びた事業になってしまうかもしれない。

 津賀社長は今回の中計をこれまでの中計と「図式を変えた」と表現する。基幹事業であれ、従来のやり方で事業を展開しても成長できない。そんな危機感の表れだろう。IoTやAI(人工知能)などを活用しながら、いかに価値を加えるか。そこが21年度までの中計のポイントになる。

 中計では「空間ソリューション」「現場プロセス」「インダストリアルソリューション」の3つを基幹事業に位置付けた。空間ソリューションはアジアを中心にトップシェアを誇る配線器具などを中心に競争力を発揮させる。これまで蓄えてきた「モノづくりの力」やデバイス事業も強化しながら、「人とモノの2つの視点で、人とつながるソリューションを提供する会社になる」と津賀社長は力を込める。

 ただ、その戦略は、抽象的な印象を残す。結局、何を強みとし、どんな技術やノウハウを磨き、競合と差異化していくのか。

 22日の東京株式市場ではパナソニック株が売られた。株価は一時、前日比2%安。投資家は見えぬ成長戦略への不満を募らせている。

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