三越伊勢丹ホールディングス(HD)は米ファッションブランド「アナスイ」の事業を2020年3月末に終了する。同社はアナスイと販売代理店契約を結び、衣料品を全国12の直営店で販売していた。直営店舗は順次閉鎖する。アナスイの化粧品やハンカチなどは、アナスイと三越伊勢丹HDがライセンス契約を結んだうえで、三越伊勢丹HDとサブライセンス契約を結んだ国内企業が製造・販売している。これらの企業とアナスイとの契約は継続する可能性がある。

三越伊勢丹HDはアナスイと契約し、衣料品を直営店で販売していた(写真:つのだよしお/アフロ)
三越伊勢丹HDはアナスイと契約し、衣料品を直営店で販売していた(写真:つのだよしお/アフロ)

 伊勢丹(当時)がアナスイと契約したのは1996年だ。その2年前の94年、伊勢丹は新宿本店に設けた期間限定の自主編集売り場「解放区」でアナスイの商品を取り扱っている。解放区は新進気鋭のデザイナーの商品を伊勢丹が買い取り、販売する売り場で、「ファッションの伊勢丹」のイメージ作りに貢献した。アナスイは同売り場として初めての海外デザイナーだった。いわば伊勢丹のバイヤーの目利き力を象徴するブランドだったと言える。

 ライセンス契約は、ブランドが新市場に参入するときによく使われる手法だ。市場の開拓期には、その国の嗜好に合った商品開発や販路の拡大といった点で、現地企業に製造や販売を委託するメリットがあるからだ。

 だが、国内アパレル関係者は、「ライセンスビジネスは過去のものになった」と話す。ブランドの知名度がある程度確立した段階では、自社で展開したほうが有利になるからだ。ブランディングを世界共通でできるという利点もある。

 英バーバリーが15年に三陽商会との契約を打ち切ったのは記憶に新しい。売り上げの相当な部分をバーバリーに依存していた三陽商会の業績は急速に悪化し、16年12月期の売上高は前の期に比べ3割減の676億円となった。その後もさらに落ち込み、18年12月期は590億円となった。

 三越伊勢丹HDは契約終了の経緯について「交渉の中で握手できなかった」としており、どちらが契約解消を持ち掛けたかは明言していない。ただ、近年アナスイ事業は低迷していたため、三越伊勢丹HDにとっても負担だった可能性がある。契約は解消されるが、「アナスイ事業は小規模で、業績への影響はごく軽微」(三越伊勢丹HD)としている。

 三越伊勢丹HDは今後ライセンス契約という手法は積極的には取らないものの、バイヤーの目利きで先端的な商品やブランドを発掘していくという。消費が成熟し、ブランドだけでは衣料品が売れなくなっている中、ブランドライセンスのビジネスが衰退していくのは当然の帰結だろう。

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