孫正義氏が率いるソフトバンクグループが動いた(写真:共同通信)
孫正義氏が率いるソフトバンクグループが動いた(写真:共同通信)

 「架空と思われる世界が実になり、実だと思われた世界が滅びていく。日本は新しい世界に対する取り組みが足りなさすぎるのではないかという危機感を持っている」

 2019年11月6日、シェアオフィス「WeWork(ウィーワーク)」を運営する米ウィーカンパニーへの追加支援でメディアからの追及を受けたソフトバンクグループの孫正義会長兼社長はこう言ってのけた。

 それから1週間後。ソフトバンクグループで検索サービス「ヤフー」を手掛けるZホールディングス(HD)とLINEが経営統合を視野に入れて協議をしていることを認めた。対話アプリで国内約8000万人のユーザーを抱えるLINEと、約5000万人の利用者を抱えるヤフーの統合が実現すれば、巨大プラットフォーマーが誕生することになる。 

 ZHDは9月に衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOの買収を発表、11月14日にはTOB(株式公開買い付け)の成立を公表するなど、ソフトバンクグループ系列企業は国内ネット市場を着実に押さえつつある。

 大和証券の石原太郎氏は「統合の方向性とスキームが見えない限り、全体のシナジーの算出は困難」としつつ、「ペイメント事業の投資抑制につながる」点を評価する。

 キャッシュレス市場の競争激化で、各社は顧客の囲い込みに向けて投資を拡大している。LINEは足元の業績が悪化。2019年1~9月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が339億円の赤字となり、前年同期の60億円の赤字から損失が拡大している。19年12月期の最終損益の市場予想平均値(QUICKコンセンサス)は383億円の赤字。2期連続の赤字が確実視されている。主因はキャッシュレス決済の「LINEペイ」や「LINE証券」などの金融事業の先行投資がかさんだことにある。

 一方のZHDも、19年4~9月期に「PayPay」の利用促進に向けたキャンペーンなどで持ち分法投資損失109億円を計上するなど、投資が業績下押し要因となっている。

 ZHDとLINEが経営統合してペイメント事業も一緒になれば、投資額も減少して業績改善に期待できるというわけだ。

 ただ、その実現のためには課題もある。独占禁止法の壁だ。「金融事業なども抱えており、公正取引委員会がどう判断するのかが注目だ」と国内証券アナリストが指摘する。両社は様々な事業を抱えており、そのシェアの高さによっては公取委が統合に「待った」をかける可能性もある。

 公取委はどう動くか。公取委が出しているガイドライン「企業結合審査に関する独占禁止法上の運用指針」では、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、企業結合を禁止」している。

 公取委に出向した経験を持つ東京八丁堀法律事務所の野田学弁護士は「報じられているスキームであれば、ガイドラインに抵触する可能性があるため、公取委への届け出が必要になる可能性が高い」とみる。その場合、30日間以内で一次審査が入る。排除措置命令を出さないという通知が来たら、経営統合が認められる。より詳細な審査が必要な場合は二次審査に入るケースもある。

 キャッシュレスの領域ではシェアが高い者同士の2社。「大手企業の参入はキャッシュレス決済市場にとって追い風だったが今回は違う。自力での事業継続は厳しくなる」と決済ベンチャー幹部からは悲鳴に近い声が上がる。

 悲鳴を上げているのはベンチャーだけではない。

 「2016年成立の改正銀行法以降、金融庁が性急に法改正を進めた結果、当初描いていた絵図とは異なる方向に向かってしまっている」と語るのはある銀行幹部だ。「既存の銀行に発破をかけるつもりで銀行以外のプレーヤーを優遇した結果がこうした事態を招いた。この経営統合が認められれば、いくつかの地銀は滅びる」と危機感をあらわにする。

 くしくも19年10月10日、ZHDとSBIホールディングスは証券業、銀行業など幅広い金融サービスで業務提携を進めていくと発表。そのSBIホールディングスは島根銀行、福島銀行と地銀に立て続けに出資をしており、新たな地銀連合構想を進めている。

 「ZHDとLINEが地銀を追い込み、SBIがすくい取るという構想ではないか」(地銀幹部)と勘繰る声もある。

 グローバルで見れば、GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)といったIT企業の寡占化が進み、日本企業が取り残されているという事実がある。一方、国内に目を移せばプラットフォーム事業者への規制強化が叫ばれており、大手企業2社の経営統合によってデータの寡占化が進むことを懸念する声がある。

 こうした状況下で、公取委はどのような判断を下すのだろうか。

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12/15ウェビナー開催、「外食を救うのは誰か」第1回――すかいらーく創業者の横川氏が登壇

 新型コロナウイルスの感染拡大から3年目となり、外食店に客足が戻りつつあります。一方、大手チェーンが相次ぎ店舗閉鎖を決定するなど、外食産業の苦境に終わりは見えません。どうすれば活気を取り戻せるのか、幅広い取材を通じて課題を解剖したのが、書籍『外食を救うのは誰か』です。
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■テーマ:「安売りが外食苦境の根源だ」ファミレスをつくった男が激白
■講師:横川竟氏(すかいらーく創業者、高倉町珈琲会長)、神山泉氏(外食経営雑誌『フードビズ』主幹)
■モデレーター:鷲尾龍一(日経ビジネス記者)
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