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NTTドコモが「瞬速5G」というキャッチフレーズを打ち出した。高速通信規格「5G」を使うサービスで高速化を前面に打ち出す背景には、KDDIとソフトバンクの2社との方針の違いがある。技術面での厳格さを優先するあまり慎重なマーケティング戦略を選ぶ姿は「4G」への移行期を思い起こさせる。

 11月5日に開かれたNTTドコモの新サービス・新商品発表会。12月の社長交代を控え、最後の登壇となった吉沢和弘社長は「新たな価値の創出や社会課題の解決のためには、5Gネットワークの質が何よりも大切。ドコモは3つの新周波数にこだわり、『瞬速5G』として展開していく」と述べた。

新商品発表会への最後の登壇となったNTTドコモの吉沢和弘社長は「瞬速5G」をアピールした

 ただの「5G」ではなく「瞬速5G」というサービス名を打ち出したのはなぜか。背景にあるのは、5Gのエリア拡大のスピードでKDDI、ソフトバンクの2社が先行することへの危機感と対抗意識だ。

 ドコモは5G基地局を21年6月に1万局、22年3月に2万局、23年3月に3万2000局まで増やし、人口カバー率を約70%に引き上げる計画だ。これに対し、KDDIは5G基地局を21年3月に1万局、22年3月には5万局にすると20年6月に公表。従来の計画から2年近い前倒しを決めた。ソフトバンクも同様の計画見直しを公表しており、KDDIとソフトバンクの2社の5Gサービスの人口カバー率は、22年3月に90%超に達する見込みだ。

4G向け周波数を5Gに転用

 KDDIとソフトバンクが5Gのエリア拡大で先行するのは、総務省が既存の4G向け周波数を5Gで使うことを認めたためだ。KDDIとソフトバンクは22年3月までにそれぞれ約1万の既存基地局を5G対応にする計画。両社とも最終的には全国で2~3万の基地局を5Gに転用する予定だ。

 ドコモも4G周波数の5Gへの転用を否定しているわけではないが、「21年度の後半から徐々に進めていく」(吉沢社長)と慎重だ。利用者の5Gへの乗り換えが進んでいない状態で4Gの周波数を5Gに切り替えると、既存の4G利用者の通信速度が遅くなる可能性があるためだという。