シャープ出身の技術者8人が2018年に起業したカルテック(大阪市)が急成長している。日本で発明された、光触媒技術を応用した空気清浄機の販売が好調で、21年9月期の売上高は前期の5.5倍となる約90億円に達する見込み。創業の原点にあるのは、染井潤一社長がスリランカで目の当たりにした生活水の農薬汚染問題。水質浄化機能などもある光触媒技術を、世界に普及させるという大きな夢を描く。

<span class="fontBold">染井潤一(そめい・じゅんいち)氏</span><br />カルテック社長。<br />1961年生まれ。奈良県出身。国立奈良工業高等専門学校を経て、徳島大学大学院化学工学専攻修士課程修了。86年シャープ入社。2018年3月退社。
染井潤一(そめい・じゅんいち)氏
カルテック社長。
1961年生まれ。奈良県出身。国立奈良工業高等専門学校を経て、徳島大学大学院化学工学専攻修士課程修了。86年シャープ入社。2018年3月退社。

 今から約10年前、当時シャープの社員だったカルテックの染井潤一社長の姿はスリランカにあった。夜になると蛾(が)が集まり害虫被害を受けていた野菜畑。農家は大量の農薬を散布するが、多すぎると人間の健康にも害を及ぼす。そうした野菜畑に設置されたのが、染井氏が開発に関わったLED防虫ランプだ。国際協力機構(JICA)のプロジェクトの一環で、シャープが技術協力をしていた。防虫ランプで虫よけをすれば、農薬を大量散布する必要がなくなる。

 だが、防虫ランプをすべての野菜畑に設置することは難しく、安価な農薬を使わざるを得ない農家もある。そうした中で、染井氏は、もう1つの現実を目の当たりにしていた。住民の生活水になっている井戸水の農薬汚染だ。農園で散布された農薬は井戸水に浸透し、それが口に入ると健康被害につながる。とくに影響を受けていたのが、大人より子供だった。

 「安全な水が確保されないことで子供たちの命が脅かされている。スリランカの野菜は日本にも輸出されていて、この国の農薬問題はひとごとではない。ここで光触媒を使えば、汚染水をきれいにできるのではないか、との思いが募った」(染井氏)

 

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