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 三井E&Sホールディングス(旧三井造船)は11月11日、2019年4~9月期決算と事業再生計画を発表した。同社は建設中のインドネシアの火力発電所の工事案件でこれまで3回にわたり、累計約1510億円の損失を計上し、財務体質の強化を迫られている。同じ案件で何度も損失を計上する背景には、2つの要因があった。

 「昨年に続き、今年も多額の損失を計上することになり、ステークホルダーの皆様に深くおわび申し上げます」。三井E&Sの岡良一社長は、11日の会見冒頭でこう語った。

会見で再建策を発表する三井E&Sホールディングスの岡良一社長(左)ら

 同社がインドネシアの火力発電所の土木建築工事案件で損失を計上したのは3度目となる。1度目は18年10月。海中に据え付けた冷却用の配管に破損が見つかり、修繕などで約413億円の損失を計上した。当時の財務担当幹部は会見で「損失を保守的に積み上げた」と話していた。

 しかし、19年5月に2度目となる約380億円の損失を発表した。度重なる損失の発生を受けて、受注案件の完工後に火力発電所の工事事業からは撤退する計画を示したが、リスクは出尽くしていなかった。

 11月1日に発表された3度目の損失計上は約713億円と過去2回の損失額に比べて大きく膨れ上がった。海中の配管据え付け工事で、気象条件が想定以上に厳しいことや、海底の地盤を改良するために追加工事が発生することなどへの対応で費用がかさんだ。

 同日に開催された電話会議で、松原圭吾副社長は「今回は外部専門家による調査を実施した。さらなる損失計上がないように、最大のリスクを織り込み、保守的な数字を出した」と話した。だが、アナリストからは現状のリスクの精査状況や今後の資金繰りについて、質問が相次いだ。

 同じ案件で何度も損失が起きる要因の1つは、リスク管理の甘さだ。機械業界は受注産業のため、受注を獲得できなければ、工場の稼働は止まり、社員が働く場がなくなってしまう。岡社長は「仕事が切れることを恐れ、受注リスクに目をつぶってきた。今回は契約内容が当社にとって不利な内容だった上、気候条件などが想定以上に厳しかった」と話す。

 こうした売り上げ至上主義は三井E&Sに限った話ではない。千代田化工建設や東洋エンジニアリングなど多くの会社が同じ過ちを犯し、遂行中の案件で巨額の損失を計上してきた過去がある。いずれの会社も現在は受注前のリスク精査を強化している。東洋エンジニアリングの永松治夫社長は「受注を取れても、もうからない案件は避ける」と話す。

 もう1つの要因は受注競争の激化だ。これまで日本企業が得意としてきたアジアの案件で、中国や韓国の企業だけでなく、東南アジアの地元財閥系企業など新興勢が台頭し、安値で入札するケースが増加している。日本企業が利益を取れるような価格で入札できる案件は自然と難易度が高いものが多くなる。

 完成したプラントや発電所の性能は、顧客の利益計画を左右するため、顧客が求める仕様は以前よりも厳しくなっている。三井E&Sの火力発電所工事案件も、顧客から雨水の貯水工事の仕様変更を要求されている。

 本来であれば、受注前に顧客が求めるレベルに対応できる技術力があるかどうかを精査しなければならない。しかし、売り上げ至上主義のため、精査に十分な時間をかけない上、日本の機械メーカーの多くが自社の技術力に過大な自信を持つ傾向がある。これらの要因が損失の発生リスクを高めている。